中国公船による領海侵入が頻繁に発生している。15日も中国公船3隻が領海侵入した。岸田文雄外務大臣は「大変遺憾で、中国大使館に抗議をした」と尖閣領海で繰り返される侵入に硬い表情が続く。
今月4日には14時間以上にわたりわが国領海にとどまる強行な侵入があり、暴挙ともいえる行動に齋木外務審議官が程永華駐日中国大使を外務省に招致し厳重抗議したばかりだ。抗議はぬかに釘なのか。全く理解されていない。
日本政府は尖閣を国有化したものの、国内における土地所有権の移行に過ぎないとの判断だが、中国においては領土問題そのものに日本政府が積極的に動き、実効支配を強化する「日本領土であることを主張する(両国間での尖閣問題棚上げ取り下げ)行為」とみている。
日本政府は「尖閣諸島はわが国固有の領土であり、中国との間に領土問題は存在しない」と一貫した態度をとっている。
しかし、2国間において片方が領土問題は存在しないと主張しても、片方が存在すると言えば、存在しないと主張する方が存在すると主張する方に積極的に誤解を解く交渉をすることが大事だろう。
相手の主張を主張として受け止めたうえで、その主張に根拠のないことを公の場で示すことが必要だ。国家統治の問題、国民世論への配慮など双方が双方の立場も踏まえて論理的・科学的・歴史的根拠に基づく折衝のうえで、東アジアの安定と両国がアジアにおいて、世界において重要な位置を占め、二国間関係においても互恵的関係になっていることを再確認しながら、この問題については特に大局的な落としどころを両国リーダーに探ることが求められている。
国会議員の中からは「尖閣問題は再度棚上げにする決断が必要」との意見もある。しかし、今回の問題の発端は野田政権が尖閣を東京都所有というひとつの自治体への所有権移転でなく、国への所有権移転を図ったことによるものであり、中国側からすれば、国有化で実効支配を強化しておきながら、棚上げで、他での互恵関係強化をと言われても、何とも都合の良い話としか受け取らないだろう。
中国との信頼関係を再構築するには、やはり、中国の主張を門前払いするのではなく、主張は主張として尖閣への考えを細部にわたって受け止めたうえで、その解釈や誤解している部分について、丁寧に説明し、紐解いていかなければならない段階にきているのではないか。「棚上げ論」は今回のケースでは中国側から提案がありえても、日本側から提案できる立場には少なくとも今はない。誤解を紐解いたうえで、一定の理解の段階に辿り着いて初めて日本側から棚上げを提案することはできよう。
中国側から棚上げ論を引き出すという手もあるかもしれない。しかし国家間交渉である以上、誤解を紐解く努力は悪く言えば中国に付け入る隙を与えた(原因をつくった)日本側から働きかけをするべきだろう。それは防御でなく、攻めになろう。
日中間では中国艦船による海上自衛隊護衛艦へのレーダー照射事件も大きな問題だ。「人民解放軍は中国政府の軍隊でなく、中国共産党の軍隊の側面も。現場では反日教育の強い影響を受けた軍幹部が力を持っているとの専門家の指摘もある」(佐藤正久防衛大臣政務官)という。加えて中国政府はレーダー照射事件は日本の捏造と批判している。
これについても、客観的な判断根拠を日本の防衛能力(機密情報)開示にならない範囲で最大限示し、事実は事実として認めさせたうえで、両国間としての大局的な視野で収拾させることが必要だ。硬軟取り合わせた安倍総理の采配に日中信頼関係の再構築がかかっている。(編集担当:森高龍二)