東京や名古屋など国内の4つの証券取引所が行った2017年度株式分布状況調査によれば、上場企業に投資する個人株主の数は17年度に延べ5,129万人に達した。株式投資の危険性に対する啓発や安全な投資のための環境整備などを講じる必要もあるのかもしれない。
東京や名古屋など国内の4つの証券取引所が行った2017年度株式分布状況調査によれば、上場企業に投資する個人株主の数は17年度に延べ5,129万人に達した。16年度と比較しても約162万人増加し、過去最多となった。個人株主の数は05年に初めて4,000超えて以来、景気下降を反映して頭打ちになっていたが、長期にわたる緩やかな景気の回復への期待感などからついに5,000万人を突破した。
個人株主の数が増加する背景には企業の体質の変化がある。株価の回復傾向はもちろんのこと、企業が個人株主も投資しやすいよう売買の単位を1,000株から100株に引き下げたことも要因となっている。それほど資金を持たない個人投資家であっても、上場企業の株を購入し株主となる機会が広がっているのだ。個人投資家の増加を企業も見逃してはいない。業績が好調な企業を中心に株主優待制度を導入することでより多くの個人株主を獲得しようという動きもみられる。実際17年には上場企業約3,600社のうち全体の40パーセント近くにあたる1,300社以上が株主優待を実施した。個人株主の中には主婦や学生なども少なくなく、株主優待に魅力を感じて長期的に株式を保有する人も多い。個人株主が増加し続けている中で、株主優待制度は個人株主にとっても企業にとってもメリットの大きいシステムとなりつつある。
個人株主の増加に伴って毎年開催される株主総会にも徐々に変化が生じてきた。これまでは株式を持っていても経営に口を出すことのない、いわゆる「物言わぬ株主」が大多数を占めていたが、6月28日に全国各地で行われた725社の株主総会では過去最高の42社が株主提案を受けた。もちろんわずかしか株式を保有していない個人株主が大きな発言力を持つことはまれだが、今まで株式を保有するだけだった株主が企業の経営体制、人事などに積極的に関与し始めていることは評価できるだろう。
個人株主が増加してきたとはいえ、18年3月末の投資家ごとの株式保有額では外国法人等が全体の30.2パーセント、信託銀行が20.4パーセントなど保有額では大きく水をあけられている。株式市場で個人株主が弱い立場であることは明らかだ。個人株主の増加は歓迎すべきことだが、株式投資の危険性に対する啓発や安全な投資のための環境整備などを講じる必要もあるのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)