近年は若い世代や女性を含む個人株主・投資家が増えており、多くの上場企業が個人向けのIR活動に力を注いでいる。もちろん、経営理念や事業計画、業績や配当を重要視して投資判断はしているが、株主優待制度も選択する要素として大きく左右される傾向にある。
株主優待とは、企業が株主に製品やサービスを提供する制度。現在、上場企業の1000社以上が導入しているが、その内容は多岐に渡っているという。基本的には自社製品などを進呈することが多いが、株主優待制度を実施している企業の中には、一般消費者でなく、法人向けのBtoB事業を展開し、自社商品がないことも多い。その場合は鉄道や飛行機などの交通手段の割引やクオカード、図書カードなどの金券を進呈することもある。
先日、野村インベスター・リレーションズから発行された「知って得する株主優待2012年版」では、株主優待のテーマ別のランキング50が発表されている。テーマは「驚き!感動の株主優待」「家族みんなで楽しめる株主優待」「クチコミで広めたい株主優待」「家計大助かり株主優待」「もう手放せない!株主優待」。なかでも総合ランキングで1位、また3つのテーマで1位を獲得し、すべてのランキングでトップ3以内に入っているのが、株主優待で絶大な人気を得ている日本マクドナルドホールディングスだ。優待内容は1冊中に「バーガー類・お飲み物・サイドメニュー」という3種類の商品の無料引換券が1枚となったシート6枚の食事優待券を貰う事ができ、株保有数によって冊数が変わる。家族で楽しめるという点が魅力となっているのだろう。
また、ダイドードリンコは1年に2回、主力ブランドであるダイドーブレンドコーヒーシリーズをはじめ、3000円相当の自社商品を進呈しており、総合ランキングでは2位、「驚き!感動の株主優待」では3年連続1位を獲得。「家族みんなで楽しめる株主優待」「クチコミで広めたい株主優待」では2位を獲得している。さらに「家計大助かり株主優待」では昨年の11位から7位に、「もう手放せない!株主優待」では7位から4位に順位を上げるなど、上々の評判を得ている。
さらに、社会貢献タイプの優待制度を取り入れている企業もある。例えば、明治ホールディングスや小林製薬、JTなど。これは、株主が商品ではなく社会貢献活動を実施している団体への寄付を選択でき、企業が相当額を寄付する仕組み。本年度は震災の影響もあり、社会貢献タイプの株主優待制度を導入した企業が昨年の39社から65社に増加している。(野村インベスター・リレーションズ調べ)。
ここ数年、個人株主が増えた要因としては、株式の取引手数料が下がり、ネット・トレーディングも活発となったことで、株を買いやすい条件が揃ったことが筆頭に挙げられるだろう。また、不況により企業間での株の持ち合いが崩れ、個人投資家の重要性が増しているのも現実だ。事業展開が不安な中で、優待制度の充実などにより、株主とともに歩む、という誠意ある姿勢を企業側が持つことが、安定株主の確保、しいては安定した経営基盤につながると考えられる。