低下する保険加入率 危機感募る生保業界

2018年08月27日 06:32

画・低下する保険加入率 危機感募る生保業界

生命保険への加入率の減少は特に若い世代で顕著だ。生保業界では危機感の高まりから、今後動画配信やスマホ向けアプリの開発なども検討している。

 多くの人が生命保険に加入するという時代は終わりつつあるのかもしれない。一般社団法人生命保険協会が公表した「生命保険の動向」によれば、2015年度の個人保険の保有契約高は約858兆円であった。保険契約高がもっとも高かったのは1996年度の1,495兆円であったがその後減少傾向が続き、現在では4割以上の減少ということになる。

 生命保険への加入率の減少は特に若い世代で顕著だ。株式会社カカクコム<2371>が実施した生命保険に関する調査では、生命保険に加入していると回答した割合は50代で84.8パーセント、40代で76.7パーセントだったのに対し20代では46.3パーセントと低下の傾向が見られる。若者の生保離れの原因はいくつか考えられるが、その一つが世帯年収の減少だろう。厚生労働省が実施した国民生活基礎調査では00年時点での平均世帯収入は617万円であったが、現在夫のみが働いている世帯の平均収入は603万円となっている。これでは生命保険に加入したくてもできないという若い世代がいるのもうなずける。ただし共働き世帯では平均世帯年収が730万円と大きく上昇している。ただし2人以上の世帯の3割が貯蓄ゼロという統計もあるため、生命保険の加入率が今後上昇するかどうかは不透明だ。

 そんな現状を変えようと生保業界も様々な対策を講じている。特に近年力を入れているのが教育現場での出前授業だ。少子高齢化が進む中、公的保障だけでは不十分であることを学生たちに周知し、生命保険はもちろん他の民間保険への加入を促したいところだ。加えて近年セキュリティの強化によってマンションや個人宅へ直接訪問して保険の加入を促すことが難しくなっているため、中学校や高校への出前授業は将来の顧客に保険の重要性を直接伝える重要な場ともなっている。生保業界では危機感の高まりから、今後動画配信やスマホ向けアプリの開発なども検討している。今後若い世代に民間保険の存在意義が浸透していくか注目だ。(編集担当:久保田雄城)