野村総合研究所は、2016年の8~9月に、全国の18歳~79歳の男女約1万人(有効回答10,070名)を対象として、訪問留置法で金融意識や金融行動を尋ねる「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」を実施した。
ここ数年の金融サービスの変化は「ポイント」や「電子マネー」での支払いが増加したという。野村総合研究所(NRI)<4307>は、2016年の8~9月に、全国の18歳~79歳の男女約1万人(有効回答10,070名)を対象として、訪問留置法で金融意識や金融行動を尋ねる「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」を実施した。この調査は、2010年、2013年に続き、今回で3回目の調査となる。
調査では、概ね2000年以降に普及が始まった「新しい金融サービス」について、その利用率の変化を捉えている。2013年から2016年にかけての変化を見ると、「ポイント(での支払い)」が21%から40%へと大幅に増加したほか、「電子マネー」が18%から29%、「ネットバンキング」が18%から21%に増加している。貯まったポイントを、コンビニやスーパーマーケットなどでの買い物の支払いに使う「ポイント(での支払い)」や、ICカードなどに搭載された「電子マネー」のように、生活に身近な新しい決済サービスの普及が急速に進んでいるとしている。
それに対して、「コンビニATM」は、利用率が4割近くと普及が進んでいるが、その上昇率は頭打ちになっているという。また、「ダイレクト自動車保険」、「オンライントレード」、「デビットカード」、「ネット生保」は、利用率が1割未満にとどまり、変化も微増もしくは横ばい。新しい金融サービスの普及に関しては、サービスによって明暗が分かれた。
「FinTech(フィンテック)」とは「Finance(ファイナンス)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語であり、情報技術を活用した今後の新しい金融サービスを表すものとして、近年注目を集めている。調査で主なFinTechサービスへの関心度を確認したところ、上位2項目の関心度は、「家計簿アプリ」が29%、「車載機器で取得される運転情報に応じた保険料設定の自動車保険(以下、テレマティクス保険)」が12%だった。それ以外のFinTechサービスについては、関心度が10%未満にとどまっている。
調査で対象としたFinTechサービスのうち、最も関心度の高かった家計簿アプリについて、7つのイメージの有無を聞いたところ、「あてはまるものはない」と回答した割合は37%だった。また、ロボ・アドバイザー・サービスについて、10のイメージのいずれにも「あてはまるものはない」と回答した割合は58%だった。すなわち、主なFinTechサービスに関しては、まだ何の印象も持っていない人が多く、サービス内容等についての認知度向上が、最優先の課題であることがわかった。
次に、家計簿アプリに対して何らかのイメージを持っている人を対象に集計すると、肯定的な印象だけでなく、否定的な印象も一定割合を占めている。具体的には、「アプリやソフトの使用は面倒だ」(36%)、「データの消失や流出が心配だ」(31%)となっており、操作の煩わしさや、利用にまつわる不安という心理的なハードルが存在していると見られるとしている。
また、同様に、ロボ・アドバイザー・サービスに対しても、否定的な印象として「自分の意向を十分に反映してくれるか不安」(34%)、「温かみがなさそう」(28%)、「営業・窓口担当者からのアドバイスの方が信頼できそう」(25%)を挙げる人がいる。FinTechサービスの普及に向けては、生活者の心理的な障害を取り除くことが鍵になるとしている。(編集担当:慶尾六郎)