ベンチャー企業・IT企業を中心にスーツを着ないビジネスパーソンが増加しており、深刻なスーツ離れが進んでいる。より高品質で消費者に魅力的に感じられる商品の提供によって巻き返しを図ってもらいたいところだ。
これまでビジネスパーソンといえばスーツを着ているのが当たり前だったが、そうした状況に変化が生じている。ベンチャー企業・IT企業を中心にスーツを着ないビジネスパーソンが増加しており、深刻なスーツ離れが進んでいるのだ。紳士服業界にとっては受難の時代を迎えつつある。
スーツは日本のビジネスパーソンの代名詞とも言える存在だった。総務省の家計調査によれば、1991年には1世帯当たりのスーツへの支出は2万5000円ほど、当時の平均年収が460蔓延ほどであるので0.5パーセント程度をスーツに支出していたということになる。しかしこの91年をピークにスーツへの支出は減り続け、2016年には6959円と7割減となった。16年の平均年収は420万円ほどであるので、スーツへの支出がかなり削られていることがわかる。そのあおりを受けて、紳士服大手4社のスーツ事業は伸び悩みを見せており、客離れは深刻だ。
ビジネスパーソンのスーツ離れは、スーツを着ずに仕事をする人が増えたことだけに限られない。団塊の世代が退職したことでスーツ需要が一気に少なくなったこと、クールビズの浸透により上着を着て仕事をする機会が少なくなったことなども要因の一つだ。加えて今まで紳士服に進出してこなかったデパートやショッピングモールなどもスーツ販売に参入し、競争は激化するばかりだ。さらに「洗えるスーツ」や「速乾」、「冷感」といった特徴を前面に出した商品展開、有名タレントを使ったテレビコマーシャルなど、各社も知恵を絞って顧客獲得を目指している。
それでも紳士服業界の将来が明るいとは言えない。というのもスーツの価格は下落を続けており、今ではデパートなどでも2万円から3万円程度のスーツが販売されており、安さを求める消費者はより低価格なスーツを購入してしまうからだ。これから紳士服業界の受難は続きそうだが、より高品質で消費者に魅力的に感じられる商品の提供によって巻き返しを図ってもらいたいところだ。(編集担当:久保田雄城)