昨年、経済産業省と経団連や、日本百貨店協会や日本フランチャイズチェーン協会などの業界団体が中心となってプレミアムフライデー推進協議会が発足し、今年2月24日から、企業が従業員に対して隔月末の金曜に午後3時には仕事を終えるよう呼びかける「プレミアムフライデー」という取り組みを行う
「ブラック企業」という言葉が流行語大賞のトップ10に選ばれたのは、2013年末の話。あれから3年。日本の企業体質はどう変わったのだろうか。2013年当時に比べ、「ブラック企業」という言葉自体を耳にする機会は減ったように感じるが、実際のところ、労働環境が改善しているかというと、必ずしもそういう企業ばかりではないだろう。雇用されている側の立場では、明らかに「ブラック」と思っていても、経営者サイドが全く自覚していない場合も多い。また、従業員が「うちの会社はブラック企業だから」といっても、他社の社員からみれば相当恵まれた環境であるというケースも珍しくないようだ。明らかに法律違反を犯している場合や、人命にかかわるような職場環境は別として、どこからがブラックで、どうなれば違うのかが明確でない以上、その線引きは難しい。
そもそも「ブラック企業」という取り上げ方は正しいのだろうか。
日本人は、とかくネガティブな意見で盛り上がる傾向がある。雇用される弱者に対し、雇用する強者の理論を押し付けることは言語道断ではあるが、それを糾弾するだけでは、ブラックといわれる企業を完全に排除したり、働き方を改善することは難しいのではないか。いくらブラック企業でも、そこに需要がある限り、雇用は生まれるし、その企業は発展を続ける。
一方、働き方を見直す企業も増えてきた。
昨年、経済産業省と経団連や、日本百貨店協会や日本フランチャイズチェーン協会などの業界団体が中心となってプレミアムフライデー推進協議会が発足し、今年2月24日から、企業が従業員に対して隔月末の金曜に午後3時には仕事を終えるよう呼びかける「プレミアムフライデー」という取り組みを行う。これは一つの良い機会になるのではないか。プレミアムフライデー推進協議会の目的は、金曜日午後の消費を促すことに他ならない。すでに、HISやJAL・星野リゾートなどは旅行プランを企画している。しかし、就業時間の短縮を他社に呼び掛けておいて、自社がサービス残業だらけの体質や体制では話にならない。プレミアムフライデー推進協議会に参加している企業や団体はことごとく、その企業体質と雇用形態を一から見直す必要に迫られるだろう。逆に、多くの企業や団体が参加するプレミアムフライデー推進協議会全体が模範となることができれば、日本の社会も変わっていくのではないか。
個々の企業でも少しずつ、働き方改革は進んでいる。例えば、スーツ大手のはるやまホールディングス<7416>は、4月からノー残業手当を導入することを発表した。また、工作機械大手のDMG森精機<6141>は、残業ゼロと有給休暇100%取得を掲げているし、自動車用防振ゴム世界トップシェアの住友理工では昨年11月から、ノー残業デー制度を月一回から週一回に拡大した。ただ、残業を減らすだけでは、他の日に負担がかかることもある。そのため、IoTなどを導入することによる生産性の向上や業務内容の洗い出しなども同時に行い、業務を効率化することで従業員の負担を軽減する働き方改革を進めている。
月末の金曜日の実施についてや、サービス業に従事している人たちからは不満の声もあると思うが、何かが変わっていかないと残業の習慣は変わらないだろう。日本人の働きすぎ、働かせすぎのブラック体質が変わる一石となればと思ってやまない。(編集担当:藤原伊織)