改憲案の国会提示は党議決定経てからにするべき

2018年10月21日 10:36

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身内が論理的に問題のある改憲案というだけに、野党からは反対の声以前に、安倍総理が憲法尊重擁護義務違反をしており、改憲を論ずる資格もない、との指摘が相次いでいる

 自民党の下村博文憲法改正推進本部長が24日から始まる臨時国会で国民投票法の改正案を成立させることや国会の憲法審査会に憲法への自衛隊明記、緊急事態条項など4項目について自民党案を提示したいと公明党の北側一雄憲法調査会長に19日、理解を求めた。

 北側氏は丁寧な対応を促したが、自民党内でも党議決定できていないものを国会に示してまで前のめりに急ぐ姿勢には来夏の参院選挙に不安があるからなのか、と疑問を抱く。少なくとも、党議決定を経てからにするべきだろう。

 自民党の石破茂元幹事長は19日のブログで「憲法前文も、第9条第2項もそのままにし、第3項に自衛隊を書く、という摩訶不思議な論に自民党内から異論が噴出せず、マスコミもこれを政局的な観点からしか報道しないのは風化がそこまで進んでしまったということなのでしょう」と安倍晋三総裁が突然言い始めた「9条1項、2項をそのまま残し、自衛隊を書き込む」改憲論に「摩訶不思議な論」と改めて疑問を投げた。

 身内が論理的に問題のある改憲案というだけに、野党からは反対の声以前に、安倍総理が憲法尊重擁護義務違反をしており、改憲を論ずる資格もない、との指摘が相次いでいる。
 
 日本共産党の志位和夫委員長は安倍総理の9条改憲への暴走は常軌を逸している。特に今月14日の観閲式で9条の事実上の改憲発言をしていることには「内閣総理大臣としての発言であることは明瞭だ」とし「政治的中立性が最も厳格に求められる実力組織である自衛隊に、最高指揮官の内閣総理大臣が持論である改憲の号令をかけるなど、自衛隊の最悪の政治利用。閣僚の憲法尊重擁護義務を規定した憲法99条違反であることは明瞭だ」と批判する。

 志位委員長は「憲法99条を平気で破るような政権に、憲法審査会で憲法を論じる資格はない」と18日の記者会見で断じた。国会で14日の発言の意味を問い質すことが求められる。

 また社会民主党の吉川はじめ幹事長も同様の指摘をする。「自衛隊員に改憲への意欲を示す訓示を行うことは、憲法の平和原則をふみにじり、明白に憲法尊重擁護義務に違反するもので、許されない。自民党員・党友の調査では憲法改正の優先順位は極めて低く、先の自民党総裁選の結果からも安倍改憲案への異論が根強いことは明らか。直近の各種調査でも改憲案の臨時国会提出反対が5割を超えている」と国民に対し丁寧な、そして謙虚な姿勢を強く求める。

 安倍総理と自民党は改憲推進右派のために動くのではなく、国政を預かる国民の声に謙虚に耳を傾ける与党としての対応を忘れてはならない。24日からの国会対応は参院選に反映されることになるだろう。(編集担当:森高龍二)