認知症は高齢者に好発の精神疾患である。統計的に言って高齢者人口が増加すれば認知症の人口も増加する。認知症は名前の通り認知機能が低下する疾患である。重症になれば状況把握能力や理解力が著しく低下することもある。認知症では行動力は必ずしも大きく低下しないため介護者の負担は大きくなることが知られている。
介護保険という形で介護一般については社会化がある程度なされているというものの、認知症介護に特化した介護の社会化は未だ十分とは言えない。介護者は経済的にも身体的にも、また精神的にも大きな負担をかかえ、場合によっては孤立しているケースも少なくない。こうしたケースでは高齢者虐待にもつながりかねないリスクがある。認知症介護のさらなる社会化が期待される。
認知症関連の保険を取り扱うリボン少額短期保険が認知症の家族がいる全国の男女317人を対象に「認知症に関するアンケート調査」を実施し、その集計結果を公表している。
認知症の家族がいるものに対して「関心のある情報は何か」と選択式で回答してもらったところ、「治療に関する情報」が58.7%で最も多く、次いで「介護方法に関する情報」が58.0%となっており、この2つが約6割と他の選択肢と比べ高くなっている。
また「心理的な負担軽減や今後のリスクに関する情報」も50.2%と半数を超えており、認知症介護の先が見えないところからくる心理的な負担の大きさがうかがえる。実際、「負担に感じているものは何か」という質問に対しては、「心理的・精神的負担」が90.9%とほとんどの者が心理的な不安・負担を抱えているようだ。
経済的負担についてみると、「衣食住における生活費が増えた」が71.7%で7割を超え最も多く、次いで「入院費や治療費がかかる」が63.8%で、この両者が他の選択項目と比べて断トツで高くなっている。また破損・損壊の修理費用や賠償費用、訴訟費用、慰謝料などの費用を負担と感じた者も1割程度存在する。
「今後不安に思うことは何か」という質問に対しては、「きちんと介護し続けていけるか」が65.6%、「自分の精神を保ち続けられるか」が62.5%で、この両者が他と比べ高くなっている。やはり、認知症介護での先行きの不透明さが大きな不安となり心理的な負担になっていることがわかる。
介護者を孤立させ不幸な自体を生まないよう、また介護者個人の幸福追求の観点からも、さらなる社会的なサポート制度が必要なのではないか。(編集担当:久保田雄城)