長時間労働を是正するために政府主導の働き方改革が取り組まれている。多くの企業での取り組みの中で実態は徐々に改善傾向にあるようだが過労死や過労を原因とする自殺のニュースは後を絶たない。
警視庁のデータによれば日本の自殺者数は2009年をピークに減少傾向に転じ2017年には2万1321人まで減少した。勤務問題を原因とする自殺も11年以降減少傾向で17年には1991人となっている。しかし自殺者全体に占める勤務問題を原因とする自殺者の割合は増加の一途をたどっており17年に9.9%に達している。企業にとっては労災対策の中心は従業員の精神保健に関する対応にシフトしているようだ。
厚生労働省は先月下旬に「平成30年版過労死等防止対策白書」を公表している。この白書によれば、週労働時間が60時間以上の労働者の割合は04年の12.2%をピークにして、その後減少傾向にあり2017年には7.7%となっている。こうした数字の傾向にはパートタイムの増加の影響も含まれているとの指摘もあるが、長時間労働は徐々に解消に向かっているようだ。
年次有給休暇の取得率を見ると、06年の46.6%を底に増加傾向で推移しており、16年には49.4%と半数近くまで達している。
労災補償の状況を見ると、民間労働者の脳・心臓疾患の支給決定件数は07年の392件をピークにその後は低下傾向で17には253人となっている。一方、精神障害の支給決定件数の推移を見ると07年が268人に対して17年は506人と増加傾向で推移している。
こうした状況の中、政府は22年までに精神保健対策に取り組む事業場の割合を80%以上にする目標を掲げている。実績を見ると、当該事業場の割合は16年に56.6%となっており、11年の43.6%から13ポイント増加している。
精神障害の増加は認知度の増加である可能性も強い。今まで単なる体調不良とされてきたものが明確な疾患と認知されるケースが増えてきたとも言える。いずれにしろ正確な医療的な判断によって発症を未然に防ぐことは重要だ。
政府は今年7月24日に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直しを行っている。この大綱の中で重点職種として教職員、IT産業従事者、医療従事者などが挙げられている。いずれの職種も現在の変革を求められている社会の中で重要な役割を担っている者達である。早めの対応で貴重な人材を失わないように社会全体で取り組まねばならない。(編集担当:久保田雄城)