政府が日本経済団体連合会の要請に沿う形で、単純労働者を含む外国人労働者受け入れへ出入国管理法を改正するための改正案を2日閣議決定した。今国会での成立を目指す。外国人労働者が日本で暮らし、問題なく働ける環境が受け入れる日本側にできているのか。懸念が指摘されている。
来年4月施行と「おしりを切って」審議入りするのでなく、慎重審議が強く求められている。少なくとも施行は再来年からとし、1年以上猶予を持たせる中で、共に暮らす意識の醸成づくりこそ大切だ。
単純労働者に対する人権侵害が起きないか、搾取に近い不当な労働状況が生まれないか。
すでに外国人技能実習制度を活用し実習に従事する外国人に対する「給与不払い」や「長時間労働」などの問題が頻発している。
立憲民主党の長妻昭政調会長(元厚労大臣)が1日の衆院予算委員会で提起したところでは、国の調べだけでも2014年からの8年間で技能実習生の12人が命を自ら断った。「外国人労働者が過酷な雇用状況、住宅環境にある」と提起した。
長妻元厚労大臣は「昨年だけで技能実習生として日本に来た外国人の7089人が失踪、今年1月から6月までに4279人が失踪している」と深刻さを述べた。
また「外国人労働者は約130万人いるが、多くの問題が起こっており、その問題を解決してから慎重に門戸を広げる計画を立てるべき」と政府に求めた。
長妻元厚労大臣は「異国に行って約束と違う働き方を強いられ、失踪や自殺に追い込まれることのない日本にしなければ国際社会から信頼失う」と懸念を示す。
外国人労働者の受け入れに関して社会民主党の吉川はじめ幹事長は「人権を十分に尊重し、労働条件はもちろん生活支援や文化の共生まで、きめ細かい環境整備が不可欠だ」と提起する。
それは「法務・入管だけでなく、人権、社会保障、雇用・労働、地方自治、教育、経済産業、外交など様々な観点からの議論や業種ごとの検討も必要」であり「拙速に進めれば混乱や摩擦、労働者の人権侵害も起こしかねない」。
吉川幹事長が「外国人は『安価な労働力』や『雇用の調整弁』でなく、一度受け入れれば日本側の都合だけで帰国を強いることはできない。目先の労働力を充足させるためだけに急ごしらえで受け入れ拡大を進めても、将来に大きな禍根を残しかねない」。政府はこの指摘に謙虚に耳を傾けるべき。
腹を据え、与野党の合意の下で、多くの国民が賛成できる制度設計を行い、国民に示したうえで改革を図るべき。来年4月におしりを切って臨むべきではない。(編集担当:森高龍二)