都有地の有効活用が住まい手の意識改革を後押しする

2012年01月16日 11:00

 都有地は様々な形で有効活用が計画されているが、昨年12月に民間の事業者が決定した、環境に配慮した住まいを安価で提供するプロジェクトが注目を集めている。

 2010年に完了した「勝どき一丁目地区プロジェクト」は都営勝どき一丁目団地跡地に進められた賃貸住宅、子育て支援施設、店舗からなる複合施設を開発するというもの。東京建物とイヌイ倉庫が事業者の中心として開発を進め、東京都より70年の定期借地契約によって、土地を賃貸し、子育て世帯に優しい環境を整えている。他にも、子育てに関連する事業計画として、地域の福祉インフラ整備事業の位置付けとなる「保育所整備」があり、待機児童解消を目指し、東村山市を皮切りに世田谷区でも2013年度の開設を予定しており、昨年12月に3例目となる府中市が決定したばかりだ。

 一方、昨年3月に発表された「都市再生ステップアップ・プロジェクト(渋谷地区)は、渋谷区宮下町アパート跡地などを有効活用し、周辺開発の誘発を図ることを目的とし、平成27年に竣工の予定だ。

 このような都有地の有効活用目的のプロジェクトは多方面で行われているが、現在、住まいのトレンドでもある”低CO2排出住宅”を中心とした街づくりを目指したプロジェクトが注目を集めている。

 2013年度の街開きを目指し、動き出した事業「東大和市向原地区プロジェクト」。このエリアに供給される予定の住宅は約200戸。CO2排出量が低く、そして、以前開発された「東村山市本町地区プロジェクト」での成果のひとつにあたる、間取りの大きさと質を確保しながら、建物の価格を市場の3割程度安く抑えてあることが特徴だ。設備として太陽光発電システムなど、再生可能なエネルギー利用機器を搭載したエコハウスが中心となり、環境に配慮した街づくりを目標としている。

 この事業に携わるのは中堅住宅メーカーのアキュラホームを中心とした「東京ビレッジ」という名称のグループ。同社が代表企業となり、東日本ハウスら民間企業10社で構成されている。今回、4グループによるコンペで、このプロジェクト事業者に選出されたのだが、選考理由について東京都都市整備局では、共有地(コモン)を囲む5から10戸程度単位の居住群により構成されるクラスターコモン(ブドウなどの房に例えた集合体。この場合は共有地と居住群を相互に関連させ一つの集合体として捉えている)を単位とした住宅計画や、集会所にコミュニティマネージャーを常駐させる等のコミュニティ形成に関する意欲的な提案を数多くしたことが評価されたとしている。加えて、東日本大震災の教訓を踏まえ、防災を意識したコモンの使用方法なども高評価に繋がった。

 また、以前開発された「東村山市本町地区プロジェクト」の成果普及を今プロジェクトに活かすという点に関しては当時、東村山で行われた”戸建住宅価格引き下げの実証実験”で多くの民間企業の取り組みによってもたらされた成功例が、東大和にも活用されると予想される。具体的に言えば、安価の建物と定期借地件(70年の貸付期間)により、土地の購入費用がないことで、住まい手の負担はぐっと減るということだ。さらに、東村山のプロジェクトにも参加し、同エリアで最高51倍の申込み倍率で、25区画を建築・販売した実績を持つアキュラホームら2社が、今回プロジェクトに名を連ねていることからも、前回のノウハウを活かすことが可能であり、ユーザーの安心感にも繋がると思われる。

 エネルギー問題や防災に対する意識が劇的に変わったものの、それを実現する住宅のコスト高への不安は残る。それを軽減させる、このような有効な土地活用がますます増加傾向となり、全国の自治体へ広がるきっかけとなるよう、今後も同様なプロジェクトを積極的に立ち上げてほしい。