現在、日本経済は拡張傾向を維持している。「いざなぎ越え」のニュースも出たが、成長率は極めて低い水準で、拡張と言ってもゼロメートルへ向かっている段階に過ぎず、政府も「回復基調」という控えめの表現にとどめている。今回の拡張は主に世界経済の回復がトリガーになったものだが、現在ではこれが企業業績を改善し、さらに設備投資へとつながる好循環となっている。
一方、内需ではオリンピック関連需要が今回の拡張を底支えしていると言われる。このためオリンピック関連需要が一巡する2019年は景気後退へ反転するのではないかという懸念が以前より指摘されてきた。しかも、19年10月には消費税の増税がある。機械受注統計などの先行指標でも「足踏み状態」という言葉が目立ち始めてきた。こうした中、企業が想定する19年の景況見通しはどのようなものであろうか。
帝国データバンクが19年の景気見通しに対する企業の意識調査を実施、その結果を13日に公表した。調査は11月下旬時点のものである。
まず、今年18年の景気動向の判断については、「回復」とする企業の割合が9.4%で昨年17年の20.3%と比べ10.9ポイントの大幅な減少となっている。一方、「踊り場」と回答した企業は54.7%と半数を超えた。「悪化」は17.2%と2ケタ代に急増している。18年は自然災害などが多発し経済にも大きなマイナス影響を与えたという側面もあろう。
では、来年19年の見込みはどうであろうか。19年の景気見通しは9.1%で昨年の見通し20.3%から大きく減少している。「踊り場」と回答している企業は昨年と同水準であったものの、「悪化」は約3割の29.4%に達し、昨年の見通しより増加、また今年の判断より「悪化」見込みの割合が増え、慎重な見方を強めている企業が急増しているようだ。
懸念材料についてみると、やはり「消費税制」が55.3%で半数を超えトップで、昨年と比べ29.6ポイントも増加し、次いで「人手不足」、「原油・素材価格の上昇」と続いている。また米中の「貿易摩擦激化」による関税の引き上げなども14.5%存在する。
景気回復のために必要な政策を見ると、「人手不足の解消」が42.7%とトップになっており、景気腰折れの要因になりうるものとして、超過需要状態でありながら稼働率を上げられない人手不足の状況があることを示唆している。
この他、消費刺激につながる個人減税などの消費関連が上位を占め、また「外国人材拡大」も1割程度存在した。政府はすでにこうした状況を折り込み腰折れ抑止に向け万全の体制で挑むと宣言しているが実効的な政策の出動を期待したい。(編集担当:久保田雄城)