先月15日、安倍首相は臨時閣議において来年10月の消費税率引き上げについて予定どおり実施することを表明した。7月の経済財政諮問会議では2027年度の基礎的財政収支の黒字化が試算されており、これには消費税と経済成長の両者が折り込まれている。
14年の8%への引き上げの時は、消費の低迷などマイナスの影響が長期にわたって持続し、今回も同様のマイナス影響があるのではないかと懸念されている。財政再建のためには消費税増税は必要であるという意見がある一方で、増税によって景気の腰折れが起きてしまってはむしろ財政再建にマイナスの影響を与える。
リサーチ業の大手、帝国データバンクが先月、全国の企業約2万社を対象として「消費税率引き上げに対する企業の意識調査」を実施、14日にその集計結果を発表した。
集計結果によれば、消費税10%への引き上げについて「予定どおり実施すべき」と答えた企業の割合は43.3%、「延期すべき」は12.0%、「8%を維持すべき」24.5%、「税率を引き下げるべき」6.6%、「わからない」13.6%という結果であった。「延期」、「8%維持」、「引き下げ」を合計すると今回の税率引き上げに否定的な意見は43.1%となり、「実施すべき」の43.3%と拮抗している。
規模別に見ると、「実施すべき」と回答した企業の割合は「大企業」で46.2%、「中小企業」で42.6%、うち「小規模企業」で40.4%となっており、規模が小さくなるにつれて「実施すべき」という回答は少なくなっている。
税率引き上げによる企業への影響については、「業績にマイナスの影響がある」と答えた企業は34.2%、「業績以外でマイナスの影響がある」は20.9%で、両者を合計すると55.1%が何らかのかたちで「マイナスの影響がある」と見込んでいる。
業種別に見ると、「マイナスの影響がある」と回答した企業の割合は「小売業」が81.2%で最も多く、次いで「農・林・水産」の66.7%の順になっている。やはり消費者に近い業種ほどマイナスの影響を強く懸念しているようだ。
政府に優先的に取り組んでほしい政策を尋ねたところ、「景気対策」が67.8%で突出して最多となっている。財政再建のためには消費税税率の引き上げはやむを得ないかも知れないが、そのために経済成長が鈍化してしまっては本末転倒である。政府には景気に悪影響を与えぬよう万全の政策でのぞんで欲しい。(編集担当:久保田雄城)