毎年の出生数が過去最低を更新し続ける中、政府も少子化を食い止めるための対策を講じ続けている。しかし子供を産むための環境が整っていないのであれば少子化を止めることは難しいだろう。厚生労働省が発表した2017年の医療施設調査結果によれば、産婦人科・産科を掲げる病院は前年比19減の1313施設で過去最少を記録した。
産科や産婦人科を掲げる施設の減少に伴って増加しているのが出産難民と呼ばれる人々だ。出産難民とは病院出産を希望しているにもかかわらず自宅の近くに適当な出産施設がない、もしくは受け入れてもらえない妊産婦のことだ。中には急を要する事態であるにもかかわらず近くに産科・産婦人科がなかったために新生児が死に至るケースもある。国を挙げて出生数を増加させようとしている中で、この出産難民の問題は徐々に顕在化しているのだ。
出産難民が増加しているもっとも大きな理由は産婦人科医の減少、産科・産婦人科の施設の減少だ。 全国的に医師不足は深刻だが、産科医・産婦人科医となるとその深刻さは群を抜いている。医師に対するアンケート調査によれば、産婦人科医不足が危機的な状況になっていると回答した医師は全体の6.1%、不足していると回答した医師は半数以上に上った。産科医は労働条件が非常に過酷で、医療訴訟のリスクが非常に高いため敬遠されがちであることも産科医が増えない要因だ。加えて医師臨床研修制度の改正によって産婦人科が必修科目から外れたことも産科医の減少に拍車をかけている。出産難民の増加は起こるべくして起こっている現象なのだ。
とはいえ、少子化を食い止めるために現状を甘受しているわけにはいかないだろう。全国的に医師を増やす試みが行われてはいるが、産科医の給与の見直しや訴訟時のフォロー体制の構築などによって産科医を志す医学生を増やすことが必要だ。出産難民となる母親を減らすために医療機関の現状分析と改善が急務だ。(編集担当:久保田雄城)