企業の価値とは何だろう?自社の利益を追求し、雇用を創出し、設備などを拡充して、常に拡大、発展を目指すのが企業の在り方であることは言うまでもない。また、企業の信頼性を判断する際には、財務状況などを最も重視するという人も多いだろう。しかし、最近では企業の価値はそれだけでは測れなくなっている。
企業は、その規模に比例して社会に及ぼす影響も大きくなる。当然、社会的な責任も大きくなるわけだ。自社の利益のみを追求して、社会や環境に目を向けないような企業活動を行っていると、巡り巡って、いずれ自滅の道を辿る事にもなりかねない。そこで多くの企業はCSR(Corporate Social Responsibility)活動を展開し、自社の財産や技術などを社会に還元するのだ。
「企業のCSR活動」といえば、生物の保護や植林活動など、環境破壊の防止や環境保護につながるような取り組みから、人権保護や女性の地位向上、文化支援など、その内容は多岐にわたる。多くの企業が自社の業務内容と間接的にでも関わりのあるようなCSR活動を展開しているが、いずれにしても収益に直結するようなものではない。そのため、CSR活動に投入できる資金額や活動規模の大きさには、企業の体力が反映されていると考えてもいいだろう。
例えば、東洋経済では毎年「CSR企業総覧」に掲載しているCSR138項目、財務15項目による総合評価から「CSR企業ランキング」を発表しているが、ランキングの上位にはやはり、誰もが知るような大企業が名を連ねている2018年のランキング1位はNTTドコモ。災害時の危機管理体制の強化の他、環境保護では、店舗や通信設備局舎などの太陽光発電設備やLED照明の導入、森林整備活動などが評価された。
タイヤメーカーのブリヂストンも常に上位にランクされる企業の一つだ。子供たちへの交通安全教育プロジェクトを海外で行うなど、交通に関わる企業ならではの取り組みを展開している。そもそも、タイヤ自体が環境問題に影響を及ぼす製品の為、製品自体の品質向上がCSR活動に繋がっているとも考えられるだろう。
「その企業ならではのCSR」という点では、山田養蜂場の「ミツバチの絵本コンクール」なども面白い。これは社会性昆虫といわれるミツバチをテーマに「自然環境の大切さ」や「社会とのつながり」「生命の尊さ」を表現した絵本のストーリー作品を募集しているコンクールだ。それだけなら、よくある企業主催の絵本コンクールなのだが、同社のそれが興味深いのは、ストーリー募集だけにとどまらず、ストーリー部門で最優秀賞に選ばれた作品にさらに挿絵を募集する点だ。挿絵は一般の部と子どもの部の2部門で募集されるが、子どもたちがミツバチの営みや自然に関心を持ち、環境や生命について考える良い機会になると好評だ。また、一般の部の最優秀作品は1冊の絵本となり「みつばち文庫」として全国の小学校に届けられる。募集された温かいストーリーが幾重にも重なって、社会や人々の心に広がっていく様は、まさに持続する社会の縮図ともいえるのではないだろうか。
CSR活動は必ずしも企業の利益には直結しない。でも、そこにはその企業の考え方や理念が色濃く現われている。そんなCSR活動に着目することで、売上高だけでは測ることのできない、企業の新たな価値観や可能性、将来性などを垣間見ることができるのだ。(編集担当:今井慎太郎)