イギリスのEU離脱がハード・ブレグジット(合意なき離脱)となる懸念が高まっている。2016年、国民投票で離脱が決まった後、イギリスとEU間で離脱交渉が行われ18年11月に離脱協定案が合意されたものの19年1月にはこの協定案がイギリス議会で否決、離脱期限間近の2月にはその修正案も否決されるという異常事態となった。
メイ首相は6月までの離脱延期をEUに要請、さらに10月末までの再延期が認められたものの「合意なき離脱」への懸念は払拭されていない。「合意なき離脱」に陥った場合、イギリスは域内無関税となる単一市場へのアクセスを失い英国内企業は大打撃を受ける。何よりも現在のように先が不透明な状況が外資のイギリスからの離脱を誘発している。不確実性とはリスクであって企業が最も回避しなくてはならないものだ。
この動きに関連し、帝国データバンクが自社の保有するデータベースから19年3月時点の英国に進出している日本企業について集計・分析を行い、その結果を9日に公表している。
レポートによればイギリスに進出している日本企業は3月時点で1298社、業種別に見ると「製造業」が510社で全体の39.3%を占め最も多く、次いで「サービス業」が226社で構成比が17.4%、「卸売業」223社、17.2%、「金融・保険業」が176社で13.6%の順となっている。
EU離脱が決まった16年6月からの増減をみると進出企業の数は大きく減少している。進出企業全体では16年の1380社から19年の1298社と82社減少し、率にすると5.9%の減少となっている。業種別では、「製造業」が16年の558社から19年の510社へと48社減少し、率にすると8.6%の減少となっている。卸売業では35社、13.6%の減少、サービス業では8社、3.4%の減少、金融業は17社、10.7%の増加となっている。この減少傾向がEU離脱の影響か否かこの数字だけからは判断はできないというものの、EU単一市場との関わりが重視される製造業や卸売業で減少幅が大きくなっているのは事実だ。
既に日産とホンダがイギリスからの撤退を発表している。両社とも撤退理由をイギリスのEU離脱とは関係ないと表明しているものの、ホンダの八郷社長は記者会見で「変化が読めなく、不透明だ」とも述べている。イギリスの離脱手続きが混迷を極める中、今後、日本企業のイギリスからの離脱が加速するのかも知れない。(編集担当:久保田雄城)