「世界の技術革新力ランキング」をご存知だろうか。世界知的所有権機関(WIPO)、フランスのビジネススクールINSEAD、米国のコーネル大学という3つの機関が共同で作成するこのランキングは、「公共機関」「人的資材と研究」などの7項目に加え、79もの指標を評価基準に、各国・地域における技術革新に向けた環境整備や実績を調査している。
気になる日本のランキングだが、最新の2018年ランキングでは13位。かつて「技術大国・日本」とまで言われた国のランキングとしては、いささか寂しく感じる方もいるだろうが、長引く不況やグローバル化の進む社会の中で、大きくランキングを落とした時代から這い上がっての13位と考えれば、一定の評価をすべきであろう。
ランキングの評価数値も併せて発表される。そこから読み取れるのは「科学・エンジニアの人材育成が弱い」という点である。人材育成には時間もかかり、政府主導で行わねば改善されない点もある。教育を含めた人材育成の強化が待たれるところだが、各企業は先んじて、人材育成面の強化を試み続けている。その一つが「高専・学生ロボコン」だ。
1988年に始まった高等専門学生向けロボットコンテストの高専ロボコンと、1991年に大学生中心のロボットコンテストとしてスタートしたNHK主催の大学ロボコンは、国内ロボットコンテストの先駆けとなった大会だ。大学ロボコンは2015年からは参加枠が広がり高等専門学校や大学校も出場できるようになり、「学生ロボコン」と名称を改めている。「太鼓を叩く」「箱を積む」など、ロボットに様々なミッションを行わせ、そのタイムや完成度を競う大会として、国内のみならず、世界からも大きな注目を集めており、2002年には国際大会ABUロボコンがスタート。学生ロボコンはその日本代表選考会を兼ねている。
そんなロボコンには様々な民間企業が協賛や協力企業として名を連ねており、大会の運営支援はもちろんのこと、ユニークな形でサポートを行っている企業も多い。
例えば、協賛企業の一つであるマブチモーター株式会社では、モーターの提供を行っている。ロボットを動かすのにモーターは欠かせない主要部品。クラウドファンディングなどを駆使して参加まで漕ぎ着ける資金力の乏しい学生チームにとってはとくに、モーターの提供は心強いに違いない。
ローム株式会社の協賛も面白い。何と、ロボット製作に必要不可欠な自社製の電子部品を高専ロボコンでは2万5千円分(モータドライバボードは別途無償提供)まで、学生ロボコンでは5万円分まで、参加学生たちに無償提供しているのだ。トランジスタやダイオード、モジュールなど、金額上限までなら同社の高性能な電子部品から、必要なものを学生たちが自由に選択できるという。
同社は電子部品企業の中でも技術者の人材育成に力を入れている企業として知られており、
学生ロボコン以外にも、ものづくりの楽しさを感じさせる記事を集めたサイト「Device Plus」の運営や、センサや無線通信モジュールを活用したプロトタイプ作品を募集するコンテスト「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」の開催など、若者がエンジニアを志すキッカケ作りを積極的に行っている。
資源の乏しい日本が経済大国とまで呼ばれるようになった大きな理由の一つは、間違いなく「技術力」だ。近年のランキング低迷期から13位まで戻ってきた要因には、こうした技術力を競うイベントの存在や、それを支えた企業の努力がある。そして、その影響を受けて育った若者たちが花開けば、再び「技術大国」と呼ばれる未来もそう遠くないだろう。(編集担当:藤原伊織)