東大発ベンチャー「プリファード・ネットワークス」に、注目が集まっている。昨年10月に設立された直後、同社はトヨタ自動車と自動運転車の実現に必要とされる機械学習やディープラーニング技術に関する共同研究を行うと発表した。
東大発ベンチャー「プリファード・ネットワークス」に、注目が集まっている。昨年10月に設立された直後、同社はトヨタ自動車〈7203〉と自動運転車の実現に必要とされる機械学習やディープラーニング技術に関する共同研究を行うと発表した。今年6月には、パナソニック〈6752〉や産業用ロボットのファナックとの協業も発表した。なぜ日本を代表する企業がプリファードに期待するのか。
最大の理由は、プリファードの持つディープラーニング技術が大きな可能性を秘めているからだ。ディープラーニングは、網の目のような脳の神経細胞をモデルとした技術で、従来の人工知能よりも高い精度でパターンを認識できる。しかも、同社はディープラーニングによる学習の経験をリアルタイムに共有できる技術を持っている。
例えば、自動運転車が周囲との衝突を避けるための動きを学習したとすると、その知識は瞬時に別の車にも転送される。つまり、ラーニングによる成功体験の共有を繰り返すことでラーニングを効率化できるのだ。
同社の母体は、西川徹氏が2006年に設立したプリファード・インフラストラクチャー。西川氏は東京大学大学院時代の研究仲間や京都大学のソフトウエア技術者を集め、自然言語処理の技術を背景としてWeb向けの検索エンジンやデータ分析サービスの開発などで、知られるようになった。
同社が当面のターゲットとしている領域は、自動車、製造業、バイオだ。バイオ領域では、IPS細胞で有名な京都大学の山中伸弥教授の研究室と共同研究を開始している。IPS細胞によって実験したい細胞を無数に複製し、それに薬物を投与してその結果を調べることが可能になる。しかし、データの種類と量が膨大で、人間の頭脳ではパターンを読みとくことが難しい。ここに人工知能を活用することで、パターン解析が飛躍的に進むと期待されている。
「グーグルの先を行く技術を狙っている」と語る西川社長率いるプリファードは、技術大国日本の復活の起爆剤になるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)