日本の子供たちは、「理科」への関心を失っていると言われて久しい。今から11年前の「文部科学白書」では、青少年の「科学技術離れ」「理科離れ」が大きな問題として論じられている。その根拠は、経済協力開発機構(OECD)などによる国際比較調査だ。日本の子供たちの理科の成績は国際的に見ても上位なのに、「理科が好き」「将来は科学を使う仕事がしたい」と答える割合は最低レベルだという結果が、関係者を困惑させた。
「理科離れ」が叫ばれる中、文部科学省では平成14年度から、理科・数学に重点を置いた教育を重点的に行う「スーパーサイエンスハイスクール」認定制度を開始。高校と大学が連携して理系の人材育成を進めるなど、「科学技術大国」の名に傷がつかないよう、様々な対策を講じている。
一方、青少年の「理科離れ」はそれほど深刻でないとの見方もある。事実、国立青少年教育振興機構が今年8月に公表した「高校生の科学等に関する意識調査―日本・米国・中国・韓国の比較―」によると、「自然や科学」に関する興味や関心が「とてもある」+「ある」と回答した生徒の割合は、日米中韓とも過半数を超えている。最も関心が高いのは中国(8割)だが、中国以外の3カ国では6割前後で大差がない。
さらに「理科」については、4カ国とも「理科を学ぶことは受験に関係なくても重要だ」と答える割合が7~8割を占めており、その重要性を認識している。ただ、日本では「理科の学習は面白い」、「自分が行きたい大学に入るために、理科で良い成績をとることはとても重要である」の割合が高い一方、「社会に出たら理科は必要なくなる」と回答する割合が4カ国中、最も高いのが特徴だ。「将来、科学的なことにかかわる仕事に就きたい」割合も、アメリカ(48%)、韓国(44%)、中国(31.8%)に次いで27.6%と少ない。
こうした傾向が、「青少年の理科離れ」としてクローズアップされているのだろう。が、日本の高校生たちは他国の高校生と同様、理科を「面白い」と感じ、学習には前向きなのだ。彼らの学習意欲をいかに、社会に出てから活躍する理系人材の育成につなげられるかが、問われているのだろう。「理科離れ」という言葉だけでは、見えないものもある。(編集担当:北条かや)