JLLのレポートによると2019年第1四半期の世界の商業用不動産投資額は前年同期比 8%減の1560億ドル。投資額では東京がトップ、次いで上海。東京は昨年の91億ドルから65億ドルに減速。上海は増加。
東京五輪後の景気失速を懸念する声が多かった。しかしこのところ五輪後の失速はさほど心配することはないという声も多くなっている。国家戦略特区とも相まって東京では再開発ラッシュとも言える状況だ。大手町、八重洲、新橋、虎ノ門、品川・渋谷等々と次々と再開発プロジェクトが立ち上げられ着工されている。
かつてのバブルを思い起こさせるような再開発ラッシュだが五輪後の国際都市東京の需要を見込み国家戦略とも連携した底堅いプロジェクトだ。しかし、わずかな懸念も存在する。世界の不動産投資はアジアへとシフトしているが、その中で東京だけが相対的な減速感が見られる。
5月21日、米国シカゴに本社を置く大手総合不動産サービスのJLLが2019年第1四半期の世界の商業用不動産投資に関する分析レポートを公表した。
レポートによれば本年第一四半期の世界の商業用不動産投資額は1560億ドルで前年同期比8%の減少となった。2019年通年では5~10%減の約6,900億ドルと予測している。
この減速傾向はアメリカ大陸とEMEA(欧州、中東、アフリカ)で投資額が減少しているところが大きく、EMEAでは22%の大幅減少、イギリスのEU離脱問題による投資活動の鈍化も大きく影響している。アメリカは8%の減少だが投資意欲自体は堅調なようだ。
一方、アジア太平洋地域の投資額は450億ドルと前年比14%増の大幅な増加だ。大型取引やクロスボーダー投資がみられた中国での増加が寄与、韓国やシンガポールでも投資活動は堅調だ。
世界の長期推移を見るとリーマンショック時から回復傾向を示し15年にはプラトー状態になった後一進一退を繰り返している中でアジア地域のシェアは確実に増加している。
世界都市の19年第一四半期でのランキングを見ると東京が65億ドルでトップ、次いで上海の63億ドル、ニューヨーク58億ドル、ロンドン55億ドル続く。しかし、東京は前年同期の91億ドルから65億ドルと大幅な減少で、一方、上海は43億ドルから63億ドルへと急上昇している。
欧米系が減速する中、アジア地域は上昇傾向だ。東京では国内企業やJ-REITなどの国内プレーヤーによる投資が全体の83%を占めている。一方、上海では国内事業者に加え海外投資家の投資活動も活発で19年第一四半期のクロスボーダー投資額では世界2位の26億ドルとなっている。
東京での大幅な減速は五輪特需一巡によるものと想像されるが、東アジアを代表する国際都市は東京か上海か、激しい競争が行われているようだ。(編集担当:久保田雄城)