”スマートハウス元年”と呼ばれる2011年。引き続き2012年以降は、1戸レベルから街レベルへと繋がる「スマートタウン」がいよいよ登場する。
東芝が予定する大阪・茨木の工場跡地、パナソニックと神奈川県藤沢市が共同で建設する予定の工場跡地、三井不動産が千葉県をはじめとする自治体や学校法人と組み、ジョイントベンチャーを展開する予定の千葉県柏の葉、いずれも大規模な計画として発表された「スマートタウン(シティ)」だ。だが、いずれも2年以上先の竣工予定のものであり、実験などを除き具体的に入居が開始されたところはまだない。
そんな中、住宅メーカー大手の積水ハウスは、来春より実際に入居を開始する「スマートタウン」を日本で初めて展開する。
場所は宮城県富谷町明石台で、同県では震災後初となる大型分譲団地『コモンステージ明石台』(総戸数431戸)と名付けられた「スマートタウン」だ。ここでは、各戸に配置されたHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)をITコミュニティネットワークで繋ぎ、街全体でエネルギー、もしくはCO2の50%削減を目指す。
同社は横浜の「みなとみらい21地区」などで、環境関連のリーディングカンパニーと共同でスマートハウスの実証実験を行ってきた実績もあり、今回は8月より好調な販売を続ける世界初の3電池(太陽電池・燃料電池・蓄電池)連動システムを搭載した環境配慮型住宅「グリーンファースト ハイブリッド」を主軸にITネットワークを活用した「スマートタウン」を推進する予定だ。団地ではこのフラッグシップモデル住宅を初期段階で10戸程度、最終的には全体で2割程度の導入を計画している。同モデルの全戸にはEV充電用のコンセントを設置し、停電など非常時の場合も家から充電が可能となっている。自動車メーカーなどでは、EVを非常時の家庭用電源として提案するケースが多いが、このスマートタウンには”災害非常時こそクルマは走ってほしい”という積水ハウスの願いを強調していきたい考えが根底にある。さらに、独自の技術である制震システム「シーカス」、空気環境配慮仕様「エアキス」も標準装備される。また、非常時の電力問題に関しては蓄電池を備えており、フラッグシップモデル以外の住戸においても、太陽光発電システムを標準搭載している。
そして、街全体には防災機能を充実させた集会所に、蓄電池もしくは発電機を設置、非常時の電気製品使用を可能とし、防災備蓄を行う予定だ。他にも、ITによる子どもや高齢者の見守りシステムや警備員の巡回などを導入し、将来的には医療介護施設と連携した在宅ヘルスケアなどの導入も検討する。
同社は『コモンステージ明石台』を皮切りに、首都圏・名古屋・関西などの大都市を中心に、2012年中の「スマートタウン」普及を目指し、最先端の環境技術をアピールしていく。
来年以降もスマートシティ・タウンの計画は続々発表される模様で、住宅メーカーだけではなく様々な業界が参入し、主導権争いは熾烈を極めるに違いない。