コロナウイルス感染による経済状況を鑑み、トヨタ自動車は5月の国内自動車生産について、3月末に策定した計画からほぼ半減させることが分かった。6月は4割減らす計画だ。
トヨタは国内の完成車全18工場で、感染拡大に伴って生産調整する計画を打ち出していたが、具体的な減産幅を詰めていた。減産が長引けば、トヨタがものづくりや雇用の目安と掲げる年300万台の国内生産規模の維持が一時的に厳しくなる可能性もあり、部品メーカーの経営にも影響が広がりそうだ。
ホンダも、4輪車を生産する埼玉県寄居工場と狭山工場の稼働を4月27日から停止する。寄居工場は4月29日までの3稼働日、狭山工場は4月中旬に続く再停止で、5月1日までの5稼働日にわたって稼働を止める。部品調達が難しい状況を踏まえた生産調整だ。
国内大手の一角、日産でも国内3工場について、5月の大型連休以降の生産調整の見通しを発表した。横須賀市追浜工場は5月11日の車両生産を停止。栃木工場は、5月11~15日、5月18~20日、5月28~29日に休止する。グループの日産自動車九州では、5月11~13日で車両生産を止め、さらに第2工場は5月の夜勤生産を行なわない。
トヨタは2019年に国内生産は約341万台だった。そのうち約210万台が輸出分だ。大市場の北米向けが約85万台と4割を占め、次いでアジア向けが約39万台、欧州向けが約29万台だ。
トヨタはサプライチェーンの競争力は非常に高い会社だ。複数の部品メーカーからの調達でリスクを回避する部品調達を行ってきた。それでも海外生産に依存する部品の納入に影響が出ている。理由は明白だ。グローバルなモノの移動が抑制されているからだ。
トヨタの2020年計画では、国内で約324万台の生産を予定していたが、コロナ禍の影響が長期化すれば、同社が死守するとしてきた国内300万台の維持が難しくなりそうだ。
コロナショックがゴーン問題に追い打ちをかける日産は、もっと厳しい。北米市場を中心に輸出する高級車ブランド「Infiniti」車を生産する栃木工場を長期間止める処置に出た。北米市場の大部分を占める米国は、日産にとって中国に次ぐ販売実績を誇る市場だ。ただ、米国では新型コロナの感染者数が78万人を超えており、新車市場の縮小はもはや避けられない。こうした情勢を考慮し、5月下旬までという長めの日程で、栃木工場の生産調整に踏み切ったとみられる。
さらに日産は4月21日、会社稼働日である4月27日~5月1日までの5日間を臨時休業にすると発表した。対象は、横浜の本社地区、厚木地区、追浜地区、栃木地区の間接員約1万5000人とする。生産だけではなく、マーケティングや企画、設計開発などで業務が大きく遅れる。
日産では、5月に公表する新たな中期経営計画の策定が大詰だ。事業計画のベースとなる3年後の生産・販売台数は、近年を大きく下回る500万台/年を想定する。北米市場などで続く不振から抜け出せず、新型コロナウイルスによる需要の急減も追い打ちをかける。ゼロ成長が日産の「防衛ライン」となるのだろうか。(編集担当:吉田恒)