2月25日、首都圏と北海道の5都道県の解除が表明され、49日間続いた緊急事態宣言は全国47都道府県で終了した。2月25日に基本方針が出されてから約3カ月にわたって自粛が続いてきたが、この間に日本経済は大幅に後退し、特に人々の行動変容にともなう消費の低迷は深刻なものとなった。
緊急事態宣言以降、生活必需・インフラを除く多くの事業所が営業を自粛し売上の減少は5割から8割以上とも言われている。消費者も食料などの生活必需を除いては、少なくとも実店舗での購入を控えるようになった。自粛期間中における収入の減少は消費を大きく落ち込ませ、第二波、第三波の心配がある中で、この消費低迷は半年から1年以上を見込んでいる企業がほとんどだ。
5月22日、日本百貨店協会が緊急事態宣言下である4月の全国百貨店売上高概況を発表しているが、これによれば、売上高総額は1208億円、前年同月比72.8%の大きなマイナスだ。3か月移動平均を見ても自粛期間中の2-4月期の値は39.7%減と11-1月期の4.7%減と比べても大きく落ち込んでいる。
地域別にみると、大都市(10都市)のマイナス幅76.0%が地方の64.2%減を11.8ポイントも下回っている。さらに、入国制限はほぼ全ての国が対象となって訪日客が激減したことからインバウンド客数は99.5%減、売上高で98.5%減と全滅状態だ。
商品別に売上高を見ると、衣料品が240億897万円で対前年比82.7%の大幅減少になっている。インバウンド需要の喪失に加え営業自粛、高価格帯の消費抑制などが要因と考えられる。身の回り品は103億8719万円で82.8%の減少、雑貨も198億1140万円、78.8%減少と8割の減少だ。一方、構成比の大きい食料品は499億6559万円であったものの53.0%の減少と決して小さくない落ち込みである。食堂・喫茶の構成比は1.0%と小さいものの売上高は11億5225万円で89.9%減少と9割の減少となっている。
百貨店は主に高価格帯の商品構成で生活必需からは距離のある商品構成だ。宣言が解除されても景気の回復を見込む消費者は少ないであろう。宣言が解除されても新しい生活様式など消費者への実質的な規制は続く。通常の営業が再開されたとしても今後も引き続き高価格帯商品への需要は低迷し続けると思われる。底上げしていたインバウンド需要の回復も見込めない。百貨店にとってはしばらく厳しい状況が続きそうだ。(編集担当:久保田雄城)