「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2015年9月の国連サミットでSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)、いわゆる「SDGs」が全会一致で採択されてから5年。掲げられた17の国際目標は、日本では外務省主導のもとで、企業活動でも、それぞれの業務に沿った形でより具体的に、積極的に取り組まれるようになってきた。
例えば、マヨネーズや3分クッキングなどでお馴染みの食品メーカーのキューピー〈2809〉では、グループ全体で廃棄物の発生抑制に取り組んでおり、製造工程で出た食品ロス部分に関しても、堆肥や飼料、染料の原料に活用するなどしている。
フランチャイズの学習塾を展開するKUMONグループは、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」を達成する取り組みとして、開発途上国の教育改善に力を入れている。例えば、バングラデシュでは地元のNGO団体BRACやJICA(国際協力機構)と連携し、公文式学習を取り入れるプロジェクトを展開。首都ダッカで2017年にオープンした中高所得層向けの公文式教室で得た収入を「貧しくて学校に通えない」「近くに学校がない」子どもたち向けに無償で運営されているBRACスクールの運営資金にするなど、貧困層の子どもたちへの持続的な教育支援を目指している。
住宅業界では木造住宅メーカーのアキュラホームが大変ユニークな取り組みを開始した。同社は昨年開催されたG20大阪サミットでも、世界のVIPたちから大いに注目を浴びた企業だ。その理由は同社が世界で初めて量産に成功した「木のストロー」にある。世界の先進各国で脱プラスチック、廃プラスチックの動きが高まる中、日本の伝統的なカンナ削りの技法を応用し、間伐材を利用して作られたこの木のストローは、環境に優しいだけでなく、見た目も温かく、使い心地も良いと、実際に使用した各国VIPたちから絶賛された。これらの活動は、第29 回地球環境大賞「農林水産大臣賞」も受賞している。
さらに同社では。これまで行ってきたSDGsの取り組みをさらに拡大し、推進していくため、2030年までの10年間で総額10億円の予算を投入して「地球の森守りプロジェクト」を始動することを8月28日に発表した。このプロジェクトは世界でも活躍する木造建築の匠たちとともに、木のストローに続く環境貢献アイテムを開発し、ワークショップなどを通じて全国各地に広めていこうとするものだ。和紙作家の堀木エリ子氏をはじめ、数寄屋大工の杉本広近氏、組子職人の横田栄一氏、同じく組子職人の和田伊弘氏、 輪島塗士の一松春男氏、左官職人の久住有生氏、 庭師の比地黒義男氏らがプロジェクトに賛同し、進めていく。
ワークショップで使用するキットはいずれも、これまで破棄してきたような残原料、端材などを用いて作られている。創作和紙キットや、数寄屋づくりの廃材で作る名刺入れ、組子細工など、日本の伝統的な技法で作られた美しい作品を自らの手で完成させる喜びは、大人はもちろん、子どもにとっても貴重な体験となるだろう。木を使うことで、間伐の大切さや素材の重要性も学べるはずだ。
ちなみに会見はオンラインで行われ、アキュラホームの宮沢俊哉社長と井草健二常務の挨拶の後、堀木氏ら匠の面々が、次々とリモートで出演し、自らの作品を背景にプロジェクトにかける思いを熱く語った。コロナ禍でお馴染みとなってきたオンライン会見ではあるが、普段なかなか姿を見たり、声を聞いたりすることのできない日本文化を支えてきた匠たちが一堂に会し、生の声を聞くことができるのも、オンラインならではの功績だろう。こういった最先端技術と伝統文化の融合も、これからのSDGsの活動に繋がっていくのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)