日本の勤労者給与はかろうじて上昇を続けてきたものの、物価の影響を差し引いた実質賃金ではここ数年マイナスが続いている。直近のデータを見ると6月の実質賃金は2.1%の大幅な減少で、既に5月には2.3%の減少となっており、これは新型コロナの影響で時間外労働が大きく減ったためと見られている。
既に実質レベルではマイナス基調で推移してきた賃金だが、今後コロナの影響でさらなる悪影響も予想され先行き不透明感が濃くなり消費への悪影響も懸念される。これに対して今年3月期決算での上場企業における平均年間給与は減速感が見られるものの順調な上昇を続けているようだ。
東京商工リサーチが2020年3月期決算における「上場企業1803社の平均年間給与」の調査を実施し、その集計結果を11日に公表している。2020年3月期決算の上場企業の平均年間給与は630万5000円で、前年より0.2%増加した。中央値は前年と同額の614万円であった。平均年間給与は12年3月期以降、9年連続で上昇しているが伸び率は鈍化傾向だ。
国税庁の平成30年分民間給与実態統計調査を見ると正規雇用の平均給与は503万5000円となっており、上場企業と全体では127万円の格差が生じていることになる。
上場企業の平均年間給与額のトップは売掛債権保証のイー・ギャランティの2413万1000円で、株式報酬が大幅に増加し前年の1561位から急伸し唯一の2000万円台となっている。上位の10社は総合商社5社と不動産3社、M&A仲介などで、大手商社と財閥系不動産と安定しているようだ。当該期における1000万円以上の企業は33社で、前年の27社から6社増加し過去最多を更新した。
業種別では、建設業の756万1000円が最高で4年連続でトップとなっている。ここ数年、建設業は人手不足が深刻で人材確保のための賃金アップが影響したと見られる。次いで不動産業の749万6000円、電気・ガス業が689万円と続いている。一方、最低は小売業の494万7000円だが、小売業のみでみれば9年連続で平均年間給与は増加を維持している。トップの建設業と最下位の小売業の差は261万4000円で前年より3万7000円縮小したものの依然として1.5倍の格差が存在する。
3月決算の数字のため新型コロナの影響は出ていないが、今後ウイズコロナが各産業の業績、給与にどのような影響を与えるか注目される。(編集担当:久保田雄城)