個人株主・投資家に対する情報開示に意欲的な企業のIR説明会が各地で開催されている。
単独企業での開催で個人投資家の注目度が高いダイドードリンコ。同社は個人株主・投資家とのコミュニケーションを充実するために年に4回、決算発表直後に地方中核都市で、社長自らが定期的に説明を行っている。先日11月22日には福岡市で説明会を開催。第3四半期決算の概要や今後の見通しなどの説明はもちろん、入場者にあらかじめ用紙を配り、そこに質問を記載してもらい回収。後半に応える時間を設けているという。これは手を挙げて質問できない人たちに対する細やかな配慮であり、「多くの人の前で手を上げて質問するのは、なかなか難しい」といった声に対応したもののようだ。また、8月の説明会では震災で注目を浴びた「災害救援自販機」を実際に登場させ、停電時の自販機の状況などを会場の照明を落とし実演。停電になった場合、専用キーによる簡単な操作で、内臓の非常用バッテリーに切り替えることで自販機内の商品を無償で取り出せることを説明した。この自販機を用いての説明は「分かりやすい」と参加した投資家たちに好評だったようだ。
また、同じ会場に上場企業が数社集まり、イベントとしてIR説明会が行われるケースもある。例えば、本年度8月に東京ビッグサイトで開催された日本経済新聞社主催の「日経IRフェア2011 STOCKWORLD」には国際石油開発帝石や帝人、日立金属など約50社の企業が集まり、2日間の開催でのべ13,780名が来場した。また本年度、大阪国際会議場で実施されたツバルの森主催の「IRフォーラム2011」は、テーマに「環境・安心・豊かなくらし」を掲げ、個人投資家が企業をより理解するためのコミュニケーションの場として大阪と東京で開催。オムロンやライオン、タキヒョーなど多数の上場企業が展示ブースを出展し、その他数社の企業の代表者が両会場でIR関連のセミナーを行ったという。
さらにIR説明会とは一線を画してユニークなIR活動を行っている企業もある。日清食品ホールディングスは「株主懇親会」を年に数回実施している。ここでは新製品などの試食や関連グッズ、製品などが当たる抽選会を実施。企業側も株主から直接意見や質問を聞く機会として重要視しているようだ。丸一鋼管は2008年より個人投資家向けの工場見学を実施。本年度は堺工場で開催され工場設備や現場担当者による各種製品・設備の案内などを行っており、現場を直接見てもらうことで、同社への理解を深めてもらおうと考えている。
近年は自社ホームページでIRに関するコンテンツや冊子を作成するなど、企業のIR活動は一般的に浸透してきた。業績はもちろん、現状の事業展開や経営方針、成長戦略、増配などを企業側から直接説明されるIR説明会などは特に、個人株主・投資家にとって重要な判断材料となっているようだ。少し前まで安定株主であった個人株主・投資家も、長引く不況はもちろん、知識が豊富になったことで、しっかりとした情報提供を求めている。いかに説得力のあるIR活動を行えるか否か、企業側の姿勢が問われる時期にきているのだろう。