スズキのカリスマ経営者 鈴木修会長が現役を退き、相談役に就く

2021年02月28日 09:05

Toyota_Suzuki

2020年、トヨタと共同でトヨタの豊田章男社長と共に会見に臨んだスズキの鈴木修会長(写真右)

 スズキは2021年2月24日の取締役会において、スズキ「中興の祖」でカリスマ経営者と呼ばれてきた鈴木修会長が6月の株主総会をもって代表取締役会長を退任し、相談役に退くと発表した。

 半世紀近くにわたってスズキの経営を牽引してきた鈴木修氏は、スズキを日本国内では「軽自動車の雄」に育て。海外ではインドなどにいち早く進出し、独自のグローバル戦略で「世界のスズキ」に仕立て上げた。まさにカリスマ経営者であるのは、言うまでもない。

 その鈴木修会長がスズキ経営の第一線から退く。なぜか。

 ひとつは昨年の2020年、スズキが創立100周年を迎えたこと。それを機にトヨタとの資本提携を果たしたことなどが、“区切り”となったようだ。

 ただし、昨年コロナ禍が自動車業界を直撃したことで、スズキは次の100年に向けた方向性について、新中期経営計画の見直しを進めてきた。

 明けて2021年、1月30日に修会長が91歳となったことと、4月の新年度からの5カ年新中計発表のタイミングで、いよいよ長男の俊宏社長に全権を譲ることを決断したものとみられる。

 トヨタとスズキは、2016年10月12日に業務提携に向けた検討を開始して以降、具体的内容の検討を続けた。2020年3月20日には、トヨタが持つ強みである電動化技術とスズキが持つ強みである小型車技術を持ち寄り、商品補完を進めることに加え、商品の共同開発や生産領域での協業等に取り組むため、具体的な検討に着手することを公表していた。

 これらの提携が実って、トヨタはスズキが実施する第三者割当による自己株式の処分により、スズキの普通株式24,000,000株(2019年3月31日現在のスズキの発行済株式総数に対する所有割合4.94%)、総額960億円)を取得。スズキは市場買い付けにより480億円相当のトヨタ株式を取得した。

 スズキの鈴木修会長は、1958年にスズキに入社してから生産や販売現場、さらに東京では、関係官庁との渉外にあたり、「現場主義に基づく行動力」という信念を掲げた。1970年代スズキは、オイルショックと軽自動車の排ガス規制対応に苦慮して、経営は極めて厳しい状況にあった。当時の鈴木修氏は専務としてスズキの苦境打開に励んだ。実質的にスズキの経営をリードしてきた。

 地方の生活の足である国内自動車占有率約4割を占める軽自動車は、「庶民の味方だから絶対に存続させないといけない」というのが持論だった。

 モビリティ新時代とCASE対応に向けて、2019年8月にトヨタ自動車との資本提携を決め、「トヨタとの協業」でスズキの生き残り策を方向づけたのが最後の大仕事になった。これは「同じ時代」を生きてきたが、先に経営の第一線を退いた盟友の豊田章一郎氏との接点で実現したものである。

 鈴木俊宏社長主導による新たなスズキ中期5カ年計画は、2026年3月期に売上高4兆8000億円、営業利益率5.5%への成長を狙う。2025年以降スズキが生き残るため、この5年間は電動化技術を集中的に開発する。研究開発費1兆円を投じ、自前でのハイブリッド車(HV)開発のほか、トヨタとの提携で電気自動車(EV)を市場に投入していく。(編集担当:吉田恒)