思いやり予算増額なら地位協定見直しに一層努力を

2021年03月14日 09:05

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在日米軍駐留経費、いわゆる「思いやり予算額」(日本側の負担額)は5年の特別協定を見直す今年度、見直しができずに1年延長して、今年度同様の約2000億円の負担額に決まった

 在日米軍駐留経費、いわゆる「思いやり予算額」(日本側の負担額)は5年の特別協定を見直す今年度、見直しができずに1年延長して、今年度同様の約2000億円の負担額に決まった。

 日米同盟の強化とともに在日米軍による『抑止力』効果を否定することはできないが、今後の交渉で負担金の1割増は避けられないのではないか。仮に負担増を是とするなら、日米地位協定の見直しと並行して協議を進めていくことを望む。米軍訓練による騒音軽減と空の安全の担保を特に期待する。

 トランプ政権で韓国への交渉がそうであったように、大統領補佐官だったボルトン氏は回顧録で現行の約4倍(日本円で約8400億円)の負担を求める考えを日本に伝えていたとしている。当時、在韓米軍駐留経費に関して米国は前年比5倍にあたる50億ドル(約5400億円)を韓国に要求し、負担割合を定める協定が膠着状態に陥っていた。

 それがバイデン政権に変わり、協議は前進。今月8日「米韓間で負担割合について原則的に合意した」との報道が相次いだ。

 そして直近で、合意額が1兆1833億ウオン(1126億円)と前年比13.9%増になったことが明らかにされた。今後、日本に対しての米側の要求も簡単なものではないだろう。国民が納得できる協議結果を目指してほしい。

 思いやり予算は在日駐留米軍の労務費や光熱水費、訓練移転費用などだ。日本が負担することに対して感覚的に理解できるとすれば「日本の防衛力」や「抑止力」に駐留そのものが効果的であるとの受け止めがあるからだろう。

 日米安全保障条約で在日米軍基地を日本が提供するかわりに、日本が他国から攻撃された場合、米国は日本とともに日本を防衛する義務を負っている。米国が攻撃された場合に日本が出撃し米国を守る義務は課されていない。

 そのため「日本は安保にただ乗りしている」と米国では誤解もあるようだ。しかし、日本に駐留していることが米国の極東アジア戦略に大きく貢献し、日米韓連携で、この地域の平和と安定に寄与し、バランスをとっている事実があり、相互に理解しあい、信頼を強固なものにしていくことが今後、さらに必要だ。

 在日米軍駐留経費の負担を巡る協議では、日本も応分の負担を行うが、一方で、冒頭に記したように日米地位協定の見直しや空の安全を担保できるよう、協議のテーブルに乗せて交渉を進めることを強く望む。そうでなければ、本来、米国が自国で負担すべき労務費や光熱水費を日本が負担する、しかも、いくらか増額するには「国民の理解は得られない」と主張していくべきだろう。東アジアの安定には日米韓の連携が重要だ。

 岸信夫防衛大臣は12日の記者会見で、韓国との関係について「北朝鮮対応を考えた場合にも、わが国にとっては日米、日米韓、日韓、こうした連携というものは大変重要だと考える」と語った。誰もがそうした認識だろう。そして、韓国が在韓米軍駐留経費で13%の増額を飲んだ。日本はどうするのか。日米韓の連携強化を考慮すれば増額は避けられないだろう。だからこそ、地位協定の見直しのテーブルに米国が着くように、政府には一層の努力が望まれている。(編集担当:森高龍二)