米国のトランプ大統領が6月26日の米メディア・FOXビジネステレビのインタビューに「米国が攻撃されても日本は我々を助ける必要は全くない」と発言し、日米安全保障条約のいわゆる「片務性」に不満を漏らした。
こうした認識のトランプ大統領と安倍晋三総理が28日の日米首脳会談では「日米同盟強化で一致した」(日本政府)。米国ホワイトハウスは「日米同盟に基づく世界規模での協力を深化させ、拡大させていく意向を確認した」と声明を出した。
日米同盟強化の意味するところ、日本の役割分担・思いやり予算・防衛装備の拡充というトランプ大統領の意向に沿った姿勢を安倍総理が示したと推察される。
加えて、G20に出席したトランプ大統領は記者会見で、安倍総理との首脳会談でも安保条約の片務性について「もし日本が攻撃されればわれわれは全軍をもって戦うのに、アメリカが攻撃された場合、日本は戦う必要がない。ばかげた取引だ。これを変えなければならないと伝えた」と語り、安保見直しの必要を提起。しかも「半年前から日本に伝えている」とした。
今年1月の総理の年頭記者会見。安倍総理は「具体的な憲法改正案を示し、国会で活発な議論を通じ、国民的な議論や理解を深める努力を重ねることが選挙で負託を受けた国会議員の責務だ」などと改憲議論は国会議員の責務だなどとして、憲法9条に自衛隊を追記することや緊急事態条項の加憲に強い意欲を改めて示していた。
自衛隊追記で集団的自衛権行使をフルに行える法整備が可能になる。法の原則で「後からの規定が先の規定に優先する」からだ。日米安全保障条約を「片務性」から「双務性」にするには憲法改正が必要になる。違憲の条約は締結できない。「片務性」に問題があるとトランプ大統領と同じ認識にある安倍総理にとって双務性への道筋のひとつとみることができる。今後、国会で、今回のトランプ大統領の発言、日米首脳会談でのやり取りが問われることになる。
一方、米国上院が2020会計年度(19年10月~20年9月)の国防予算の大枠を定める「国防権限法案を可決した」と時事通信が数日前に報じた。法案は「日本は『責任分担』において多大な貢献をしている、と指摘」(時事通信)と伝えている。
「日本は自国防衛のための軍事能力を大幅に向上させる一方、集団安全保障への貢献も拡大している」と先の憲法9条『解釈改憲』(安倍内閣が閣議決定)に基づく集団的自衛権行使の一部容認安保法制で、日本がトランプ大統領のいう片務性から双務性へ大きく歩み寄りをみせた現実を示している。「解釈改憲」で60年以上縛ってきた軍事的制約を外した結果だ。
そしてF35の大量購入、イージス・アショアの秋田、山口への配備計画、軍港としての機能も指摘される辺野古基地建設など、米国の意向に沿った内容といわれて仕方のない状況にある。
F35の大量購入は日米貿易摩擦との絡みが言われ、イージス・アショアの秋田、山口への配備はハワイ、グアム防衛の米国最前線基地、辺野古新基地建設は空母・潜水艦寄港可能な軍港、こうした見方に政府は「まったく当たらない」と否定するが、反証することがない。ぜひ、反証頂きたい。
今回の日米首脳会談でも「軍事・防衛装備」が両首脳間で具体的にどのように話し合われたのか。「(在日米軍の)直接的な費用負担、在沖縄米軍の移転経費負担、地域支援、その他の同盟に関する支出面で最も大きな貢献をしている同盟国の一つ」(米・国防権限法案で指摘)とされる日本が、日米同盟強化の名のもと、費用面のみでなく「専守防衛」ラインを超える域に足を踏み込むことはないのか、日米同盟強化の中身を国民は注視しなければならない。
■注釈=日米安全保障条約は「日本の施政の下にある領域に対する武力攻撃が生じた場合、日米両国が共同で日本防衛に当たる」旨を規定(第5条)。米国に日本を守る義務を負わせている。
かわりに「侵略に対する抑止力としての日米安保条約の機能を有効に保持するため」として、日本が『平素から米軍の駐留を認め』、『米軍が使用する施設・区域を必要に応じ提供できる体制を確保しておくこと』を規定している。(編集担当:森高龍二)