コロナ禍でも門出を祝う。あえて対面での入社式を敢行した企業と、経営者の想い

2021年04月11日 08:17

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徹底した感染対策のもと、対面で心温まる入社式を実施する企業もあった。

大阪府で4月10日に過去最多の918人の感染者が確認されるなど、未だ猛威をふるい続けている新型コロナウイルス。しかし、それでも春は訪れる。4月に入ると入学式や入社式など、新しい門出を祝う式典が全国各地で催されている。今年も昨年同様、感染防止に配慮して、規模を縮小したり、オンラインで開催する企業なども多い中、この状況下でも徹底した感染対策のもと、対面で心温まる入社式を実施する企業もあった。

 例えば、木造注文住宅メーカーのアキュラホームグループでは、2021年4月1日に新入社員85名が参加する入社式を開催した。アキュラホームといえば、“カンナ社長”の異名を持つ、大工出身の宮沢俊哉社長が直々に、「匠の心」を継承して欲しいという想いを込めて、カンナ削りを行う日本唯一・伝統の「カンナ削り入社式」を2006年から行っているが、昨年は一度目の緊急事態宣言直前であったことも考慮して、各地域ごとに開催し、オンラインで繋ぐ分散型開催となってしまった。しかし、今年の入社式は、実施の検討から新入社員とともに議論を重ね、その結果「コロナ禍でも繋がりやコミュニケーションを大切にしたい」「対面の入社式を希望したい」という多数の声があったことから、アキュラホームグループとしては初めて、新入社員の要望を取り入れて、彼らとともに作り上げる対面型の入社式の実施に至ったという。

 同社の今年の入社式は、ソーシャルディスタンスを充分に意識したものであるのはもちろんのこと、入社式では付きものの「辞令」も、木造注文住宅メーカーならではの「木の辞令」が交付された。この「木の辞令」の材質には抗菌作用が高いヒノキを使用。さらに新型コロナウイルスに有効な成分として経済産業省お墨付きのウイルスシールド加工を施して安心・安全を追求しているという。ちなみに同社グループでは

 すべての展示場や事務所などで、このウイルスシールド加工を採用しており、商品にも標準仕様として取り入れている。新入社員たちが、これから自分たちが扱う商品を「辞令」で体感できる、粋な計らいだ。

 もちろん、恒例の「カンナ削り」も実施された。ただし、今年はただカンナ削りを行うだけでなく、新入社員85名全員が所信表明として漢字1文字、合計85文字を全長3メートルの木材に書き、それを宮沢社長自らが大鉋(おおがんな)で削るという、例年よりも「人の繋がり」を意識した、熱い入社式となった。

 また、化粧品メーカーの株式会社コーセーも4月1日、東京都中央区の本社にて入社式を実施した。ただし、全新入社員が会場に出席するのではなく、オフラインとオンラインを組み合わせた形式で開催。出社しない新入社員については各自宅よりライブ配信にて出席する形をとった。

 小林一俊社長は「初めてオフラインとオンラインを組み合わせた開催となったが、新入社員らの顔をしっかり見ることができたのは大変意義がある」と述べたあと、単にコロナ対策というだけではなく、同社が進めるDXプロジェクトにおいても言及し、これまで対面でのカウンセリング販売中心だった事業形態から、今後はオンラインとオフラインを融合させた販売方法が求められていると語り、まさにオンラインとオフラインを融合した今回の入社式になぞらえた訓示を行っている。

 長引くコロナ禍で、世間にも不安が広がっている。ワクチンの接種も始まったものの、未だ目に見えるような効果は現れていない。その上、変異株の登場など、不安に拍車がかかっているような状況だ。しかし、だからといって後ろばかりを向いていても仕方がない。こんな状況でもできること、こんな状況だからこそできることも多いはずだ。入社式のあり方を見ると、その企業や経営者の姿勢もよくわかる。こんな状況での入社式でも決して手を抜かずに、新人たちのために知恵を絞って工夫している企業は、業種や業態にかかわらず、昨年の業績が良い企業が不思議と多い。今年入社した新入社員の皆さんにはぜひ、そんな前向きな会社、経営陣とともに、明るい未来を目指してほしいものだ。(編集担当:今井慎太郎)