高齢者の医療費窓口負担「2割対象は政令次第」

2021年05月14日 06:25

 「75歳以上の単身世帯で200万円以上、夫婦では320万円以上の年間所得がある高齢者」(政府説明)について、医療機関の窓口で支払う自己負担額を「1割」から「2割」に引き上げる後期高齢者医療制度改革法案が自民、公明などの賛成多数で11日、衆院を通過、参議院に送られた。

 日本共産党の宮本徹衆院議員は医療費自己負担が1割から2割になる対象範囲の所得に関し「法案では『政令で定める』とあるだけだ」と問題をあげ「単身世帯の場合は年間所得200万円以上、夫婦世帯の場合320万円以上でスタートするが、政令次第で範囲は拡大する」と警鐘を鳴らしている。

 志位和夫委員長は宮本議員のツイッターを紹介したうえで「(単身者の場合)200万円以上が対象と報道されていますが、政府の一存で(政令で)いくらでも範囲は拡大できる仕掛け。高齢者医療費2倍化〝白紙委任状〟法案を許してはなりません」と将来、さらに2割負担となる対象者の所得額が引き下げられ、拡大できる建付けになっていると問題視し、指摘している。

 政府は今国会成立を目指し、22年10月以降の実施を予定。今回対象となる後期高齢者は約370万人とされる。政府は「現役世代の負担を軽減し、世代間の公平性を図ることが目的」という。しかし現役世代の社会保険料は本人と事業所が折半する建付けなので「国などの公費負担と事業主負担の軽減」(福島みずほ社民代表)が本当の狙いといえそう。

 福島氏は「多くのマスコミや専門家も『現役世代の保険料負担を軽減するため』という政府の主張に引き込まれているが、騙されてはいけない。現役世代の被保険者の保険料は1人当たりわずか年400円、月にして33円の軽減にしかならない」と指摘。

 そのうえで「高齢者の生活は増税や保険料負担増、年金額削減などで、今までになく貧困化している。コロナ感染症災害はこの暮らしを脅かす実態をさらに強めている。しかも後期高齢者医療の平均年齢は83歳。この高齢者層に受診抑制を強いることは確実にいのちを奪うことにつながる」と懸念する。(編集担当:森高龍二)