格安スマホ。市場は急速に拡大。シェア競争激化で企業間格差。今後、撤退や淘汰が加速する見込み

2021年05月21日 06:35

画・格安スマホ。市場は急速に拡大。シェア競争激化で企業間格差。今後、撤退や淘汰が加速する見込み。

東京商工リサーチが「格安スマホ業者の業績調査」。「格安スマホ業者」104社の売上高は3.5兆円(前期比7.5%増)

 諸外国に比べ日本の携帯料金が割高とされ、政府は2019年に電気通信事業法の改正を行い、政府主導の携帯料金値下げが行われている。

 5月11日、東京商工リサーチが「格安スマホ業者業績調査」の結果レポートを公表、これによれば、「格安スマホ業者」と呼ばれるMVNO(仮想移動体通信事業者)主要104社の最新期の売上高合計は、前期比7.5%増の3兆4674億5,000万円で、純利益は同22.0%増の3044億8,000万円と前期から大幅増となり、増収増益だ。総務省のデータによると20年12月末のMVNO契約数は前年同期比7.9%増の2586万件で、順調な利用者数の増加が売上高の伸長につながった模様だ。

 ただし、増収企業数は減少している模様で、最新期の決算では増収が85社で構成比81.7%、減収が19社で同18.2%となっており増収企業は8割を超えているものの、前期の増収企業は95社で構成比91.3%、減収企業は9社の同8.6%となっており、増収企業は前期から10社減少している。市場は拡大傾向だが、その中で企業間格差が拡大しているようだ。増収企業85社のうち、売上高伸長率が5%未満の企業が60.0%を占める51社、5%以上10%未満が25.8%にあたる22社で、増収企業のなかでも伸長率の格差が広がっている。

 格安スマホ業者104社の最新期の利益は、増益が50.9%を占める53社、減益は51社で全体の49.0%で半々となっている。しかし、増益企業の比率は前期から4.8ポイント下落した。最新期は黒字が全体の93.2%を占める97社、赤字が7社で構成比は6.7%だ。赤字企業は前期から1社増、前々期と比べると5社増加しており収益格差も顕在化している。

 業界全体では増収増益で好調にみえるMVNOだが減益企業と赤字企業が増加し、ジワリと企業間格差が広がっているようだ。こうした状況の中、この1月にはテレコムサービス協会が総務省に対し適正な競争のため「イコールフッティング」の確保が必要不可欠との要望書を提出しているが実効性のある規制にはまだ至っていない。

 成長をたどるMVNO市場は新規参入も多く、競争が激化しており、今後は市場からの撤退や淘汰が加速する可能性も高まっている。レポートは「5Gの普及など、今後も通信環境は大きな変化が見込まれるなか、MVNOのニーズは高まることが期待されており、今後の展開が注目される」としている。(編集担当:久保田雄城)