今後、好調な住宅市場に求められるものは

2011年11月21日 11:00

 2011年もあと1か月余り。長引く不況に追い打ちをかけるように多大な被害をもたらした東日本大震災は、各企業にも様々な影響を与えた。

 そんな中、07年の改正建築基準法施工の影響による新設住宅着工数の減少、08年の世界的な金融不安、09年の消費低迷の影響で着工数が伸び悩んでいた住宅メーカーは今年、政府の住宅取得支援策の後押し効果や震災の復興需要なども重なり、大手をはじめ、中堅でも増収増益が多く見られた。

 その要因としては、耐震・耐火住宅、省エネ・創エネなど高付加価値ニーズが高まり、住宅の環境性、安全性、省エネ性に消費者が強い関心を寄せたことが挙げられる。一方では、低コスト住宅への関心も非常に高まっており、好調な販売実績により、安定した経営を続けている中堅住宅メーカーも多い。

 例えばアキュラホームは、17期連続で増収増益、成長を続けており、今期も前期売上を上回る予定だという。

 同社は戸建住宅部門においては、エコポイント対応の主力商品に特別グレードとして採用されていたエコ機能を標準仕様として採用するなど、顧客ニーズに合った販売戦略を行った。また、09年より開始した「家守り」活動をはじめ、地域に密着したサポート展開が好評で、ユーザーの支持を獲得した。この「家守り」活動では、引き渡し後、住まい方を提案するセミナーや「お手入れ講座」などを定期的に開設している。また、修繕に必要な工具を無料貸し出しするサービスも行っており、このような活動が支持率上昇の後押しにもなっている。

 一方、大手住宅メーカーでは、第2四半期で過去最高の売上となった大和ハウスが、戸建住宅部門において、家庭用リチウム蓄電池、太陽光発電システムに、それを制御するHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を業界で初めて搭載した「スマ・エコ オリジナル」を販売し、ニーズの高まるエネルギー関連システムが装備された住宅の売上が好調だったことや、海外事業への展開が特徴的だった。パナホームは戸建住宅部門において、新開発のHS工法によって高められた耐震構造を持つ「カサート」をはじめとする『エコアイデア住宅』の販売が好調であり、リフォーム事業も含めW発電(太陽光発電システム・燃料電池)やセルフクリーニング効果のある光触媒の外壁など環境商材が採用されるケースの増加などもあり、堅調な伸びを見せた。

 このように、各メーカーの好調さの要因には復興需要にプラスされた特徴としてエネルギー関連のシステム搭載の標準化への動きがあり、今後、ますますこの競争は激化するだろう。実際、経営資源の豊富な大手メーカーだけでなく、中堅メーカーにおいても、徐々にHEMS搭載住宅も登場しており、標準採用も現実的に見えてきた今、いよいよスマートハウスが主力商品になる日も近づいてきたと感じられる。

 また、莫大な資金のかかる開発競争の一方で、アキュラホームでも見られるような、ユーザーとの距離を縮め、決め細やかなサポートを展開する地域密着型サービスの強化も今後のカギを握りそうだ。