スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋出入国管理局の収容施設で収容中に死亡した事件に関し、出入国在留管理庁は調査報告を10日公表したが、人権尊重意識のひどい希薄さと収容者への医療体制不備が露呈されるものになった。報告書は女性の死因について「病死」としながら、原因を「特定することは困難」などとして記していない。
女性は2017年6月に1年3か月在留留学生として入国、翌年6月に日本語学校から除籍になり、3か月後に難民申請するも認められず、残留期限切れで不法残留になり、所在不明に。昨年8月19日出頭し、不法残留で逮捕され、翌日、入管に引き渡されて収容されていた。そして今年3月6日に死亡した。
報告書は(1)幹部が被収容者の体調等を把握し、必要な対応を検討・指示するための体制が整備されていなかった(2)看守勤務者が女性に器質的疾患が見当たらず、仮放免を受けるための誇張もあると認識した(3)女性が死亡する前の数日間の医療的対応について、抗精神病薬、睡眠誘導剤の処方に問題がなかったかに関して、職員の判断で服用を止めるのは困難。休日も処方した医師に連絡・相談できる体制はなし。
(4)死亡した当日、午前中、血圧など想定不能だったがその後、対応がなかったことに関して、休日は医療従事者が不在で外部の医療従事者にアクセスできる体制もなかった(5)救急搬送の遅れに関しても、休日に体調不良者の容態の急変等に対応するための情報共有・対応体制がなかった、などなど、命に係わる重大な問題に関し、基本的体制がとれていない人権尊重意識のなさが浮き彫りになった。
調査報告書は(1)「出入国在留管理の使命と心得」(仮称)の策定を行い、全職員の意識改革を図ること(2)被収容者の体調等をより正確に把握するための通訳等の活用を含め、的確な情報把握と共有に基づき医療的対応を行うための組織体制に改革すること(3)収容施設の性質等を踏まえた計画的で着実な医療体制の強化・計画的で着実な強化のための専門家会議の開催・庁内診療体制の強化、休日等を含めた外部の医療機関との連携体制の確立・強化などをあげ、今更ながらの改善点をまとめた。
このほかの改善策に(1)体調不良者の仮放免判断に係る新たな運用指針の策定(2)体調不良者等の収容継続の要否を本庁がチェックする仕組み(3)被仮放免者に関する民間団体との連携(4)本庁における情報提供窓口及び監察指導部署の設置(5)内規の周知徹底を含めたDV事案への適切な対応などをあげた。
立憲や共産は「事件発生当時の状況を収録したビデオの開示を強く求めていく」としている。共産の志位和夫委員長は11日「あまりの人権無視に慄然とする。何より処遇と死亡の因果関係が明らかにされていない。真相究明とともに、在留期限が切れただけで、裁判所も通さず、入管の裁量で問答無用で収容する強権的制度の抜本改革が必要だ」とツイッターで提起した。(編集担当:森高龍二)