ワクチン接種の普及に従い日本でも感染者数が急激に減少しはじめ実効再生産数も0.7を下回りワクチン効果が見え始めたようだ。ワクチン接種先行国の欧米では既に経済活動の正常化が進められており、行動制限中に積み上がった貯蓄が一斉にはき出されるリベンジ消費によって今後高成長が期待されている。日本でも過剰債務問題や息切れ倒産増大などを背景に経済正常化に向けた議論も聞こえるようになった。そのような中、多くの企業で正常化後のインフレを警戒する声も高まってきているようだ。既に物はインフレ、サービスはデフレ状態にあるが、正常化で物のインフレが加速し小売・サービスなどの末端レベルを中心に価格転嫁困難の状況が懸念される。
9月9日、帝国データバンクが「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(8月)」の結果レポートを公表している。これによれば、新型コロナによる自社業績への影響について「マイナスの影響がある」と見込む企業の割合は73.7%で、前月比4.4ポイントの増加と3カ月ぶりに増加に転じた。宣言延長が実施されるなど長期にわたる人流抑制策が悪材料となっているとレポートは見ている。業種別には、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」が92.0%、「旅館・ホテル」91.1%、「医薬品・日用雑貨品小売」90.9%、「飲食店」90.2%などで引き続き「悪影響」が大きくなっている。
現在から1年後の「仕入れ単価の見込み」については、「非常に上昇すると見込む」、「上昇すると見込む」、「やや上昇すると見込む」の合計は69.2%と約7割にのぼる。既に金属や木材、半導体などの材料不足や原油価格の高騰などが生じていることも背景とみられる。 また、1年後の販売単価の見込みを尋ねた結果では、「上昇すると見込む」が42.8%、「低下すると見込む」は14.6%、「変わらない」42.6%となっている。これを「仕入れ単価が上昇すると見込む」69.2%と比較すると、25ポイント以上の差が生じており「販売価格への転嫁が難しい様子がうかがえる」とレポートは指摘する。実際、企業からは「アパレル業界は、仕入れ単価の上昇を適正に加工賃に反映できない業界だと考えている。川下の意識を変えないといけないと思う」などという声も見られる。
政府には「経済活動の再生・企業活動の持続に資する国民と企業の希望となる政策の打ち出しが求められている」とレポートはまとめている。(編集担当:久保田雄城)