人生100年時代などと言われる。平均寿命が延びたと言うことだが、それはまた老後が長くなったと言うことも意味する。老後の生活を豊かで安定したものにするために資産形成をしっかりやらなければならないと言うことは以前より言われ続けてきたことだ。
日本人の節約ムードが高まってきているなどともいわれるが、日本人の貯蓄の目的の一つに老後のための蓄えが上位にランクすることは昭和の時代から変わらない。少子高齢化の進展で社会保障のみへの依存心は以前よりは減っているようだが、国民の長期的な資産形成への知識が十分高まっているかというと必ずしもそうでないらしい。
関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構が20~70歳の一般人5370人を対象として長期の「投資行動に関するインターネット調査」を3月に実施、19日にその集計結果を公表している。
調査結果によると、「長期投資に最も向く資産は」という質問に対して、「現金・預金」が28.0%と約3割で最も多く、次いで「国内株式」の21.9%、「金・プラチナ」が15.0%、「投資信託」14.2%、「国債」8.6%の順となっている。「インフレーション・分散投資」クイズを行った結果と照らし合わせると、クイズの正解率100%の者は0%の者に比べて「投資信託」を選んだ割合が約3倍となっており、この点からレポートでは「金融知識の普及は、日本人の投資行動を変える可能性がある」としている。
投資信託は多数の個人から広く資金を集めることで分散投資を可能にしてリスクを減らす金融商品だが、「国内株式」の選択率が「投資信託」よりもかなり高かったことについて、レポートでは「個別株式への投資が、投資信託よりもリスクが大きいという認識が、一般に浸透していない」ことの表れだと結論づけている。
しかし、何といっても日本人の投資行動の特徴は「現金・預金」の比率の高さであろう。日本は明治以来、郵便貯金で資本を調達し、戦後は間接金融優位の下で郵便貯金や銀行預金を奨励して資本調達を図ったという歴史的背景を持つ。このため日本人の貯金好きは有名だ。しかし、既に日本はインフレ基調の経済となっており、長期投資となると現金・預金の長期保有はインフレによる実質目減りを意味する。それでもなお現金・貯金主義のままであるということは、確かに日本国民の金融知識は十分とは言えないと言わざるを得ない。(編集担当:久保田雄城)