予想されていたとおり冬が到来し新型コロナ変異株の感染者が増大している。2年にも及ぶコロナ禍で企業は疲弊しているものの、2021年の企業倒産は歴史的低水準で、政府による資金繰り支援や企業努力によって企業業績も2極化しているようだ。コロナ禍の悪影響が直撃した飲食店ではスマホ注文やテイクアウト、宅配でむしろ業績を伸ばしている企業も少なくない。
しかし、宿泊業や旅客運輸、代理店など観光関連業はインバウンド需要自体が蒸発し、短期的に国内外の旅行需要がコロナ前へと回復する見通しも付かず苦しい経営環境にある。昨年からは売上回復の見込みがないまま返済開始となる過剰債務状態の企業も増加し、政府のリスケ支援で何とか破綻を免れている企業も多い。特に、観光関連業では売上回復の目途が立たず事業継続を断念する「あきらめ廃業」が増加しているが、過剰債務状態の中で債務が膨らむ前に廃業を急ぐ「駆け込み廃業」の増加が懸念される。
1月18日、帝国データバンクが全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021年)の結果レポートを公表している。これによれば、21年に全国で休業・廃業、解散を行った企業は5万4709件で、前年比2.5%の減少となった。目立つのは、財務内容などにある程度の経営余力を残し、資産超過状態で自主的に会社を休・廃業、解散を行った「あきらめ休廃業」が増加していることだ。資産が負債を上回る状態で休廃業・解散となった企業は62.0%で過去最多、うち黒字かつ資産超過は16.0%と1割強を占めている。
旅行関連業で「休・廃業、解散率」が急激に高まっている。休・廃業、解散率が最も高いのは旅行代理店で5.4%、20年の3.4%を大きく上回っている。また「旅館・ホテル」でも2年ぶりに前年を上回った。観光関連業のみでなく企業全体として「コロナ禍が長期化するなかで、中長期的な事業の先行きを悲観し、財務内容に余力のある企業が先んじて『あきらめ型』の休廃業を選択している可能性がある」とレポートは分析する。企業は感染流行の中でも本業立て直しによる「収益改善」と「借入金の返済」というテーマに立ち向かわざるを得ない局面にあるが旅行関連業は需要回復の目途はいっさい立たない。レポートは「現状以上に借入金が増える可能性がある追加の金融支援を受けず、余力のあるうちに会社を畳む『駆け込み廃業』が 2021年以上に増加するシナリオが最も懸念される」と結んでいる。(編集担当:久保田雄城)