SDGsは、大人より子どもの方が理解が深い。その驚きの理由とは?

2022年02月13日 10:02

マイクラ最終審査会会場

子どもたちの教育現場には様々なかたちでSDGsが浸透し始めている

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す、17のゴールと具体的な169のターゲットからなる国際目標「SDGs」。日本でも国や自治体、企業を中心にSDGsへの取組みが活発になっており、一般的な認知も順調に広がっている。

 ところが昨年10月にCCCマーケティング総合研究所がTポイント会員2222人を対象に実施したアンケート調査で、大変興味深い結果が出ている。社会や自然環境に関することをテーマにした同調査の結果によると、「SDGs」という言葉の認知度は全体の80%以上と高いことが判ったが、「知っていて、十分に理解できている」と回答したのは大学生が21.5%、高校生が29.5%というのに対し、取り組んでいるはずの経営者や会社役員では17.8%、会社員及び公務員にいたっては12.9%に留まり、学生を下回ったのだ。もちろん「理解」の定義は人それぞれで、社会人の尺度と学生のそれも違うので、必ずしも正しいデータとは言えないかもしれない。だが、調査を行ったCCCマーケティング総合研究所では、この結果は、大学や高校の教育現場でSDGsが課題として取り入れられていることで、学生の中でSDGsに対する認知と理解が深まっており、それに加えて、学生によっては課外活動や自主活動等による行動も伴っていることが大きいのではないかと分析している。

 実際、子どもたちの教育現場には様々なかたちでSDGsが浸透し始めている。例えば、昨年募集が行われた「Minecraftカップ2021全国大会」など、ユニークな取り組みがある。

 同大会は、世界中で大ブームを巻き起こし、2019年には世界で最も売れたゲームとなった「Minecraft」の教育版「Minecraft: Education Edition」を活用した作品コンテストだ。参加者は18歳以下の子どもたちが対象で、1人(個人)もしくは30人以内のチームでエントリーし、SDGsの目標である「すべての人に健康と福祉を」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「陸の豊かさも守ろう」の3つのうち、1つ以上のSDGsを取り入れて、全ての人々が充実した暮らしを送ることができるワールドを作るというものだ。

 第3回を迎えた本大会では、全国各地から全481作品もの作品が集まり、2022年1月30日に開催された最終審査会・表彰式では、オンライン上でのプレゼンテーションと厳正な審査の結果、全14のアワードが発表された。栄えある大賞と建築賞の二冠に輝いたのは、作品名「EREC‐地球蘇生実験都市」を制作した熊谷武晴さんだ。熊谷さんは何と、個人参加で、山口大学教育学部附属中学校の3年生。地球蘇生というコンセプトで、壊れてしまった地球をもう1回蘇生するため、様々なアイディアを散りばめた施設を綿密な調査とともに建築している作品だ。表彰式の模様は、同大会のサポーターでありゴールドパートナーでもある積水ハウス<1928>の「Tomorrow’s Life Museum関東」から配信され、熊谷さんはじめ受賞者には、同社施設内のモデルハウス「小林さんち。」を再現したMinecraftのワールド上でトロフィーが贈られた。また家族が笑顔になる夢あふれる「住めば住むほど幸せ住まい」が表現された作品に与えられる、積水ハウス賞には、浦和マイクラ部の9人チームによる「SDGsで未来を変えろ」が選ばれた。SDGsが失敗した未来からやって来たエージェントが、ミッションをクリアしながら世界をより良い方向に変えていくというストーリーで、MinecraftとSDGsに関する身近な課題をつなげた作品となっている。

 大人たちの世界ではどうしても、「持続可能な社会」という言葉ばかりが先行して、それに取り組むことが社会の義務であるかのような、半ば強制的な印象がある。しかし、子どもたちの世界は違う。「Minecraftカップ2021全国大会」のように、子どもたちの興味や親しみのあるフィールドに組み込むことで、子どもらしい豊かな想像力を活かして楽しみながらSDGsとは何かを肌で理解している。大人たちの間にもSDGsの認知や理解をもっと深めるためには、義務ではなく、楽しみや興味につながり、能動的に向き合えるような仕掛けが必要なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)