書類の電子化・ペーパレス化に追い風。大手住宅メーカーも取扱説明書の電子化を推進

2022年01月30日 10:02

e住ナビ

積水ハウスは2月から、同社の新築戸建住宅と賃貸住宅において、住宅設備機器等の取扱説明書を電子化する取り組みを開始する

 物品を購入したとき、必ずといっていいほど付いてくる「取扱説明書」。でも、その取扱説明書自体の取扱いに困った経験はないだろうか。保存しておくだけで結構な場所を取るが、かといって捨てるわけにもいかない。中でも、不動産関係の住宅設備などの取扱説明書は量が多く、収納場所の確保が難しいだけでなく、必要なときに必要な書類が探しにくい。不動産を購入したり、賃貸住宅を契約した経験があれば、その書類の多さにうんざりした覚えがあるはずだ。そこで注目されているのが、取扱説明書などの書類を電子化し、PCやスマホで一元管理しようとする動きだ。

 例えば、大手住宅メーカーの積水ハウスも昨年11月、同社が建築する新築戸建住宅及び同社グループが管理する賃貸住宅において、住宅設備機器や住宅建材の取扱説明書を電子化する取り組みを始めると発表した。引越しシーズンを控えた2022年2月から、全国の新築住宅オーナーや賃貸入居者に向けてサービスの提供を開始するという。取扱説明書を電子化は、保管場所の削減や探しやすさなど、顧客の利便性が飛躍的に高まるのはもちろんのこと、実は住宅メーカー側にとっても大きなメリットがある。同社の調べによると、戸建住宅で平均約50部、賃貸住宅で1戸当たり平均約20部の紙の取扱説明書をファイリングする作業に、戸建住宅で平均約1時間、賃貸住宅で平均約6時間もの作業時間が必要だったらしい。同社では、当面は紙の書類を並用しながら電子化を段階的に進めていくとのことだが、将来的に全て電子化が実現した際には、約8割の作業時間削減効果が見込めるという。

 不動産関係の取扱説明書に限らず、書類を電子化して管理しようとする動きは、持続可能な未来を目指すSDGs(=Sustainable Development Goals)の観点からも歓迎されるもので、定義されたゴールの多くにも該当する。これまで当たり前のように使用していた紙の書類を可能な限り電子化して紙資源の削減することで地球環境保護に貢献できる。また、紙の文書は印刷や捺印、保管・管理等、間接的な負担が大きいが、これらを電子化し、ペーパーレス化することによって、業務負荷を大幅に削減することができ、業務の効率化が図れる。とくに在宅勤務やテレワークの環境下では、書類を電子化することによって、出社や訪問、郵送などの手間も省け、より円滑に業務を遂行することができるようになる。さらには地震や台風、大雨などの自然災害や、新型コロナウイルスのさらなる流行など、不測の事態が起きたときでも、従業員の安全を確保しつつ、事業継続を両立させることが可能だ。

 ところが、それだけメリットが大きいにも関わらず、日本ではなかなか導入が進んでいない。パソコンの取扱説明書など、一部の電子機器類などでは電子化が進んでいるが、先に挙げた不動産関係など、多くの分野ではまだまだ、紙の書類が主流に使われているのが現状だ。電子化を推進するためには、社内の規定や制度の整備、データの保管や管理方法などについての社内ルールの構築、一定水準のITリテラシーも必要になる。これらが大きな障壁となっているのだろう。

 しかし今回、積水ハウスが本格的に取扱説明書の電子化に乗り出したことで、住宅業界ではそれに追従する動きも出てくるのではないだろうか。同社以外にもすでに電子化に取り組み始めている企業もあるが、業界を代表する住宅メーカーが動くことで、業界全体で書類の電子化が加速することが期待できそうだ。折しも3月の引越しシーズン前。新築住宅のオーナーや賃貸住宅の入居者がその利便性を実感すれば、住宅業界だけに留まらず、他の産業分野における書類の電子化、ペーパーレス化をも推進する強力な追い風となるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)