世界の自動車市場は新型コロナの影響で2020年春に大きく落ち込んだものの夏以降は回復傾向に転じた。コロナ前の水準には戻ってはいないもののxEVの販売は好調で欧州を中心にEVシフトが生じている。21年も順調な回復基調を見せていたものの、世界的な経済再開の影響で半導体供給の遅れなど21年後半からは自動車生産自体が減速傾向となっている。世界の政府は30年代の脱内燃機車を宣言しており、日本も35年までのガソリン車新車販売の禁止を目標に掲げている。こうした流れの中でBEV(バッテリ式電気自動車)へのシフトが予想され、車載モータへの需要は急速に拡大すると見込まれている。
2月16日、矢野経済研究所がレポート「車載モータ世界市場に関する調査を実施(2021年)」を公表しているが、これによれば20年の車載モータ世界需要数量は約30億個規模であったと推計されている。30年における需要数量の予測では、各国政府やメーカーの計画目標が順調に推移した場合は約60億個、半導体供給やサプライチェーンの混乱等が長引き目標値を下回った場合には約47億個と予測されている。いずれにしろ、BEVシフトの急速な進展は確実で、車載モータの需要数量は続伸の見通しだ。
環境負荷が少ないxEVのみでなくICE(内燃機車)のパワートレイン、シャシ、ボディでも電動化が進んでおり、部品の電動化に伴い車載モータの搭載が急速に増加している。半導体不足など減速要因もあるが、一方でカーボンニュートラル実現のために中国や欧州でBEVへのシフトが急速に進んでおり、電動コンプレッサや主機モータ、ADASや自動運転との関連で電動パワーステアリングや電動ブレーキの需要が増加している。政策誘導によるBEVシフト等の流れは今後顕在化し、車載モータ需要は拡大傾向で推移する見通しだ。
各国政府やOEMは電動化シフトへの目標を示しており、中国では35年に新車販売の50%をBEV、PHEVという目標を示し、欧州でも35年に内燃機搭載の新車販売禁止方針を発表している。今後はBEVを中心にxEVの普及は急速に進むとみられる。一方で、「バッテリ価格低減の限界」、「電磁鋼板などの部品不足」、「各国政府のインセンティブ縮小」などマイナス要因も出てきており、30年での目標達成は難しいとの見方もある。コロナの悪影響からの市場回復は2~3年を要する見通しで、こうした点を考慮した控えめの値としてレポートは「30年の世界の車載モータ需要個数を約47.1億個と予測」している。(編集担当:久保田雄城)