日本の長時間労働は長年問題とされてきた。働き方改革等によって徐々に緩和されてきているというものの、主要国との比較では未だ日本の労働時間が最も長くなっている。日本の長時間労働の原因は様々考えられ、近年では生産年齢人口の減少に伴う人手不足も大きな要因になっている。しかしまた、労務管理上のマネジメント不足も長時間労働の原因の大きな要因として指摘される。そうしたものの中に、日本企業ではスキルの高い特定の者に業務を依存する体質があることが指摘されている。特定の人物に依存することでその者の労働時間が不必要に長くなるだけでなく、組織全体の生産性が低下し全体の長時間労働も生まれやすくなる。さらに、その人物がいなくなってしまった場合、業務自体が遂行不可能になるというリスクもある。
Excel業務改善コンサルティングの株式会社すごい改善が4月上旬に20代から50代の社会人350名を有効回答とする「バックオフィス業務とExcelに関する調査」を実施、5月10日にその結果レポートを公表、調査結果から特定の者にエクセル業務を頼ることで残業時間が増えていると結論づけている。
Excelで使用される代表的な7つの関数の理解度と残業時間を回答してもらった結果、7つの関数の中でSUMIF関数を使うことができると答えた者ほど、残業時間が増加しているという関係が見いだされた。レポートではこの結果から、「多くのバックオフィスでは『Excelができる人に業務が集中してしまっている』もしくは『関数知識だけを駆使して、無理にやりくりをしている』状況にある」と推測し、「Excel業務が残業の温床になってしまっている」と結論づけている。そして「できる人」への依存体質が組織の非効率を招くと指摘している。
Excelの使用は本来業務を効率化させるものであるが、スキルの偏在がむしろ業務の非効率を招いてしまっている。レポートでは「現状を打開するためには、組織全体のExcelスキルのボトムアップや、関数の知識とデータファーストの思考を併せ持った人材を育成する必要がある」と指摘されており、組織がスキルの偏在を解消するために研修等によって積極的に人材育成のマネジメントをする重要性を唱えている。ここではExcelスキルのみに焦点が当てられているが、他のスキルも同様で、特定の者に依存しない組織とするためのマネジメントが長時間労働解消のために重要なようだ。(編集担当:久保田雄城)