視聴率偏重の人選、異なる視点無し番組に警鐘

2022年06月05日 08:55

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会の小町谷育子委員長は2日、毎日放送が元旦に放送した2時間トークバラエティ番組「東野&吉田のほっとけない人」で政治的公平性を問題視する意見が視聴者から多数寄せられたとして、この番組に対し4回にわたり議論した結果を踏まえ「委員長談話」を発表した。

 小町谷委員長は「政治をめぐる放送において視聴率偏重の人選がなされていないか、異なる視点の提示がないなど、質的公平性が担保されていない番組が制作されていないか。今回の問題をきっかけに各放送局において改めて確認してもらいたい」と各放送局に再確認を求めた。

 また来月の参院選を踏まえて「積極的な政治報道が望まれる。民主主義社会においては政治に関する情報は党派に偏ることなく主権者に対し潤沢に伝えられるべきであり、委員会は各放送局が政治的公平性に配慮しながら、有権者のために政治に関する情報を分かりやすく多角的に伝える放送を行うことを期待している」と積極的な取り組みを期待した。

 政治的公平性に疑問があがったのは「東野&吉田のほっとけない人」に松井一郎大阪市長、吉村洋文府知事、弁護士の橋本徹氏の3人が出演した時の内容。いずれも日本維新の会の代表、副代表、元代表という同一政党関係にあった。視聴率優先のキャスティングになったとしか言えない安直な顔ぶれになっていた。

 委員長は談話で「視聴率重視によるキャスティングが相次ぐことにより政治的公平性を損なうおそれがある」「政治に関する番組を視聴率重視で制作するなら、テレビで取り上げられる機会が多くなじみのある政治家が視聴率の取れる出演者として選ばれることになるのではないか。視聴率重視のキャスティングが各番組でなされた場合、全体として政治的公平性を保つことは難しくなるといえる。政治に関する番組でそうしたことが起きた場合の悪影響はいうまでもない。本番組はその最たる例になっているのではないか」と憂慮した。

 また「本番組が行政を担っている政党の政策について、何ら異なる視点を提示しておらず、質的公平性を欠いているのではないか」と問題を提起した。「政治家の記者会見や取材において、相手の嫌がる問題を取り上げたりすれば、政治家を不愉快にさせ、将来の取材に支障をきたすのではないかと自粛、抑制、萎縮してしまっていないか。それではメディアは政治家の主張を紹介するだけの導管になってしまいかねない。政策を多角的に検討して、そのプラスとマイナスを十分に掘り下げることによって、視聴者はより広くより深く政策を理解することができ、是非の判断もなし得る。質的公平性を担保するためには、異なる視点の提示が欠かせないことを忘れてほしくない」と政治を巡る問題を扱う場合のメディアの自覚を求めた。(編集担当:森高龍二)