【コラム】金融所得課税の強化、もはや絵空事、逆方向へ

2022年06月12日 08:35

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資産を投資市場へ促すための税制優遇の拡大が行われることになれば、『持てる者』と『持たざる者』の較差はますます拡大するだろう

 岸田文雄総理が就任当初の所信表明演説で語った「分配機能の強化」とりわけ「金融所得課税の見直しによる課税強化」はもはや絵空事。「所得倍増」は「資産所得倍増」に挿げ替えられ、7日閣議決定の「骨太の方針」で中核となる新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画では『年末に資産所得倍増プランの策定をする』と明記した。

「我が国個人の金融資産2000兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されているので、家計の預金が投資にも向かい、持続的な企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を作る」と金融市場への投資で家計を豊かにしていくのが狙いだとしている。

それは紛れもなく「金融所得課税の強化」ではなく、逆方向へ向かわせる環境整備を図ることになる。

 政府は「個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充を図る」と少額投資非課税制度の拡充を明記。

 「個人型確定拠出年金制度の改革を図り、その子ども世代が資産形成しやすい環境整備等を図る」とも明記している。資産所得倍増プランは資産家・資本家・経団連にエールを送る内容になるだろう。

 そもそも「金融所得課税の強化政策」と資産を株式や社債など金融商品市場への投資を促す『資産所得倍増プラン』は相容れない。経団連と二人三脚の岸田政権の本質が表面化してきたといえよう。

 所得税は累進課税であるため、所得が多ければ多いほど応分の負担があり、個人住民税を含め最高税率は55%になっている。金融所得課税は所得税と住民税を合わせても一律20%に優遇されている。

 そうした中で、資産を投資市場へ促すための税制優遇の拡大が行われることになれば、『持てる者』と『持たざる者』の較差はますます拡大するだろう。「分配機能の強化」は空前の灯。それでも総理は実行期限も示すことなく、金融所得課税の見直しは計画に入っていると言い続ける。政府の「言葉」ではなく、政策の「実態」を見ることが重要だ。(編集担当:森高龍二)