岸田文雄総理は27日の衆院予算委員会で、時限を区切っての消費税減税実施を求める野党に「社会保障のための安定財源。触ることは考えていない」と消費税減税は考えない姿勢を鮮明にした。
社会保障制度を支える財源をそこまで「消費税に限定する」必要があるのか。原点から見直すことが必要だ。消費税導入から34年。これまで集めた額は450兆円以上。一方、法人税・法人事業税・法人住民税の3税は330兆円を超えて減っているのは、国の財源「バランス」からみておかしくないか。
お金に色はついていない。450兆円を得ながら、7割超に相当する額が法人税減収の「穴埋め」になっているとはいえないか。「企業が世界で一番活躍しやすい国(環境)づくり」と、2013年に安倍晋三総理がぶち上げた耳障りよい環境づくりの実態が法人税減税とその減税分補填の財源確保でしかなかったというのが実態ではないのか。
低所得者層に重くのしかかる「消費税」。その軽減検討さえ拒否する一方、岸田総理は総理就任時に強調した「金融所得課税の強化」については先送りを色濃くしている。
「所得倍増」発言は、いつの間にか「資産所得倍増」にすり変わり、富裕層が貯蓄している金を株式などの金融商品や不動産など経団連が期待する『投資を促す環境づくり』へとの姿勢になった。庶民には金融市場や不動産投資のゆとりはないのではないか。
国税庁の2020年分「民間給与実態統計調査」では5928万人が給与所得者だが、民間事業者が支払った給与総額は219兆円。源泉徴収された所得税額は10兆円。平均給与433万円。30年前の1990年の平均給与425万円と変化がない。しかし、物価は上がっている。
大企業の内部留保は過去最大に膨らんだ。しかし、給与所得者の所得は横ばい状態に置かれたままというのが実態。男女間格差も、正規非正規社員間格差も大きい。20年データで男性の平均所得532万円、女性293万円。正規は496万円、非正規176万円。衆院議長の細田博之氏は「毎月もらう歳費は100万円しかない」と言ったが、非正規は1年で176万円だ。
資産所得倍増は金融所得課税の強化と相容れない。27日の衆院予算委員会で岸田総理は、金融所得課税は「決して終わったわけではない。しっかり結論を出していきたい」としたが、期限さえ示すことはなかった。
富裕層に対する証券課税を欧米並みにするだけで1兆円以上の財源が生まれると言われる中、富裕層の「金融所得課税強化」には甘々の姿勢を続け、低所得者層に重税となる「消費税」の見直し・軽減には厳しい姿勢を取り続ける。これを是とするか・否とするか、国政選挙で示すほかないのだろう。
トリガー条項凍結解除による措置を野党が求めた際、政府は国・地方の財源(収入減)への影響を強調し応じなかった。その姿勢を思い出した。
減税だけはやりたくない姿勢がありありだが、時限を区切って消費税減税を考えるべき。また減税期間だけでも安倍政権が引き下げた法人税は大企業に関して28%に戻すこと。企業の社会的責任として応分の負担は当然。それがバランスというもの。
総理には富めるものと富まざるものとの分断・弊害を排し「成長の成果をしっかりと分配することで、初めて次の成長が実現する。成長と分配の好循環を実現するために、あらゆる政策を総動員します」(21年10月8日、国会での総理所信表明演説)と熱く語った就任直後に立ち返って政策立案し、取り組んでほしい。(編集担当:森高龍二)