値上げラッシュが続いている。コロナ禍で世界的に経済活動が制限されていたが、昨年からの経済再開で需要が急増し、エネルギーや穀物価格の高騰が起こっている。2月下旬のウクライナ侵攻以降はさらに円安の急速な進行で輸入価格が急騰、企業努力で抑制されていた国内物価も春以降は値上げブームとなっている。しかし、企業が原価上昇に見合った価格転嫁を実現できているかというと必ずしもそうではないようだ。
6月16日に東京商工リサーチが「価格転嫁に関するアンケート調査」の結果レポートを公表しているが、これによれば、「価格転嫁できていない」と回答した企業は61.7%と6割超で、「全額転嫁」と回答した企業は4.0%にとどまっている。原油高や原材料価格の上昇で「経営にマイナスの影響を受けている」と回答した企業は68.6%、全体の約7割に達している。さらに「現時点で受けていないが、今後影響が見込まれる」と回答した企業も24.3%存在し、これも「影響を受けている」企業として加えると合計93.0%と、ほとんどの企業が「マイナスの影響」を受けていることになる。企業規模別で見ると、大企業( 資本金1億円以上)で93.4%、中小企業(個人事業を含む同1億円未満)で92.9%と大企業、中小企業を問わず経営にマイナスの影響を受けているようだ。
原油・原材料の高騰に伴うコスト上昇分のうち「何割を価格転嫁できているか」と聞いた結果では、「10割(全額転嫁)」と答えた企業は4.0%にとどまり、61.7%と6割超えが「転嫁できていない」と回答している。4月の前回調査では68.6%であったから6.9ポイント価格転嫁を行った企業が増えているようだ。「転嫁できていない」企業を規模別に見ると、大企業で62.7%、中小企業は61.6%となっており、それぞれ4月調査より少なくなっている。産業別にみると、「できていない」割合は、「情報通信業」が90.4%で最も高くなっており、サービス関連の業種は価格転嫁が難しいようだ。一方、「卸売業」では45.3%、「製造業」52.9%などとなっており、BtoB業種では価格転嫁が進んでいるようだ。
レポートでは大企業が中心の「親事業者もコスト上昇への対応に苦慮している」、「下請け構造の取引全体に影響が出る可能性も懸念される」、「中小企業の生産性向上を支援する取り組みと同時に、その効果が親事業者から下請け、納入業者まで広がる有用な仕組みづくりが急がれる」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)