世界ではAIの導入、人材育成投資が加速しているようだ。中・欧米では既にAIは社会生活の中に入り込んできているが、日本ではこの点遅れをとっている部分もある。しかし、新型コロナ感染症の流行の中でDX推進が強く意識され、これに伴ってAI導入を実施している企業も少なくない。
7月12日にIBMの日本法人が「世界のAI導入状況 2022年(日本語版)」を公表している。この調査は、IBMの委託により米国リサーチ会社が3月30日から4月12日にかけてIT関連の意思決定に関連する世界の経営層7502人を対象として実施したものだ。これによれば、35%の企業がビジネスにAIを活用していると回答している。前年の21年から4 ポイント上昇しており、AIへの投資は加速しているようだ。この成長加速の背景には、AIが実装かつ利用しやすくなってきていることが指摘されている。
AI導入に当っては、絶望的な人材不足も日本では指摘されているが、AIやアナリステック人材の不足は世界的なものであり、世界の企業はこの人材確保、育成のために膨大な額の資金を投資している。導入率の加速の背景には「企業が人材・スキル不足に対処しながら、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの課題に取り組み、自社のデジタル変革に投資する中で、AIの価値を認識したことによるものである」とレポートは指摘する。やはり諸外国でもパンデミックがAI導入加速の契機となっているようだ。
AI導入の障壁は未だ根強く残っている。企業のAI導入の成功を妨げている要因としては、「AIに関するスキル、専門知識、またはナレッジが限られている」34%が最も多く、やはり人材の壁がトップに来ている。次いで「料金が高すぎる」29%のコスト面、「モデル開発用のツール・プラットフォームが不足している」25%のシステム面がトップ3にきている。レポートでも「限定的なスキル、料金の高さ、および拡張や複雑なプロジェクトへの対応の難しさは、以前からAIの導入を限定する主な要因」として挙げられていると指摘している。
サステナビリティーの取り組みにAIを活用する計画について聞いた結果では、66%がESGの取り組みを加速させるため現在AIを適用しているか適用する予定であると回答している。コロナ禍でデジタル変革に投資する中、AIの価値を認識し、AIの導入と効果的運用をDX戦略の重要な部分と位置づけ、そのための人材投資を加速させている経営層が世界では増えているようだ。(編集担当:久保田雄城)