2025年の開催まで1000日を切った「大阪・関西万博」。地元大阪で開幕1000日前イベントが開催されたり、公式キャラクターの名称が「ミャクミャク」に決定するなど、徐々に万博関連の話題が注目されるようになってきた。とはいえ、関西の人ならとくに「万博」と聞いて真っ先に頭に思い浮かべるのは、まだまだ「ミャクミャク」ではなく、前回の大阪万博の顔であり、現在でも大阪のランドマークとなっている岡本太郎氏作の「太陽の塔」ではないだろうか。前回といっても、大阪万博が開催されたのは1970年。52年も前のことだ。それから世の中も随分変容している。
万博は、新しい文化の創造や科学、産業技術の発展などを目的に開催されるもので、各パビリオンなどでは、その時代の最先端が展示される。例えば、70年の大阪万博では、今では公道を普通に走っている電気自動車も、当時の最先端技術として紹介され、会場内の移動手段の一つとして、動く歩道とともに来場者の注目を集めたという。当時の人が、今の最先端の自動車に乗ったらどう思うだろう。電気で動くだけでなく、ADASなどの先進運転支援システムや自動運転技術、ナビやメーター類も液晶パネルが並ぶ次世代コックピットを目の当りにしたら、きっと度肝を抜かれるほど驚くに違いない。
でも、技術はまだ、その先へと進もうとしている。各国を代表する自動車関連メーカーが今、しのぎを削って開発に取り組んでいるのが、次世代コックピットだ。
トヨタグループの大手自動車部品メーカー・東海理化も、その一つだ。同社は自動車の車室内の各種スイッチを主力商品として事業を展開しているが、EVの普及拡大でスイッチ類が集約されつつあることを見越し、最新のセンサー技術などを駆使したEV向けの「インテリジェントコクピット」の試作品を開発している。
また、米アップルは6月6日、年次開発者向けイベント「WWDC22」で、iPhoneをカーオーディオやカーモニターに接続して操作する「CarPlay」の次世代版を公開した。次世代「CarPlay」は現行品で行なえるカーナビアプリの操作や音楽再生だけでなく、車両側のエアコンの操作パネルや、速度計やエンジン回転数などのコクピットのメーター表示のカスタマイズなども行える画期的なものになりそうだ。プレゼンテーションでは、ランドローバーやメルセデス・ベンツ、ポルシェをはじめ、日産など、各国の錚々たるカーブランドロゴが映し出されたことから、すでに対応車種の開発も順調に進んでいるとみられる。詳細は2023年に発表されるとのことで、今から楽しみだ。
自動車の電動化需要が急拡大している中国市場において豊富な採用実績を持ち、次世代コックピット向けSoCメーカーの中国最大手といわれるNanjing SemiDrive Technology Ltd.(以下、セミドライブ)は7月12日、グローバル半導体メーカーの ローム株式会社と、自動車分野における先進的な技術開発パートナーシップの締結を発表した。両社は3年前から技術交流を開始しており、コックピット向けのアプリケーション開発を中心に協力関係を築いてきた。今回、その成果の第一弾として、セミドライブの車載SoC「X9シリーズ」のリファレンスボードにロームのSerDes ICやPMICなどを搭載。ソリューションでの提供を開始した。同製品は、さまざまな車載アプリケーションの高機能化はもちろん、自動車の省エネ・小型化・安全性向上に貢献するもので、すでに多くの自動車メーカーに採用が進んでいる。
50年前に開催された大阪万博の時代には、まさにSFの中にしか存在しなかったような自動車が今、現実のものとして実現しようとしている。今度の大阪・関西万博ではどんな未来の乗り物が登場するのか。大いに期待したいところだ。(編集担当:藤原伊織)