パナソニックホールディングス(HD)のバッテリー事業子会社「パナソニックエナジー・ノースアメリカ」(PENA)は、米国中西部のカンザス州デソトに電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の新工場を建設すると発表した。これは同社の米国におけるEV電池工場としてネバダ州に次ぐ2カ所目となる。パナソニックはEV電池を成長事業と位置付けており、米国電気自動車専業メーカーテスラなどへの供給を視野に生産能力を拡大する。
新工場への投資額は40億ドル(約5500億円)で、カンザス州の投資誘致補助金制度Attracting Powerful Economic Expansion(APEX)を利用し、最大約4000人を雇用する大規模工場となる。EV販売が好調な電気自動車専業メーカー、米テスラ社に電池を供給する。米国は中国に対抗しEV電池のサプライチェーンを強化する政策を推し進めている。
パナソニックによれば、米政府は、「(今回のパナの決定は)中国が優位にたつリチウムイオン電池市場で、米国で完結するサプライチェーンを構築する取り組みだ」と評価する声明を発表したという。
パナソニックHDは新工場で、大容量の新型電池を生産する見通し。事業を担当する電池事業子会社パナソニックエナジーは、クルマの電動化の需要に対応するため米国で電池生産を拡大することは非常に重要だとしている。また、EV電池の生産能力を2028年度に現在の3~4倍に増やす方針を示す。加えて、和歌山工場(和歌山県紀の川市)で大容量の新型電池の量産を23年度中に始める予定だという。
なお、カンザス州の新工場はネバダ州でテスラと共同運営する「ギガファクトリー1」に続き米国内2カ所目の設備だ。
最近のデータによると、パナソニックHDは世界シェア4位。今後EV電池事業を拡大し、テスラ向けの供給体制を確立する。2028年度にEV電池全体の生産能力を現在の50ギガワット時から3~4倍に引き上げる方針だという。
ところで、パナソニックの車載電池事業は多岐にわたる。今年初頭には、トヨタ自動車とパナソニック、豊田通商が東大生産技術研究所と産学連携協定を結んでいる。電動車に使う車載駆動用電池の低炭素化・低コスト化、リサイクルの技術開発を目指す。パナソニック、豊田通商、トヨタとパナソニックが共同出資する電池会社のプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)、東京大学生産研が包括的な産学連携研究協力協定を結んでいるのだ。
具体的には、資源開発の段階からバッテリーの製造工程を検討し直し、電池のリサイクル技術も抜本的に変える。EV市場が本格的に立ち上がる、ここ数年を目途に新技術を確立させる考えだ。
こうした動きの背景にあるのは、欧州勢の動きだ。欧州メーカーはEV産業の主導権を握るため、環境規制の主導権奪取を強力に推し進める。日本メーカーが強いハイブリッド車(HV)を含むエンジン車の新車販売の規制に動く。一方で、EVを巡って欧州委員会が新たな「電池規則」の導入を進める。
中国も内燃機関の排ガス浄化技術やハイブリッド技術で後れを取った自動車産業の活性化をEVへの移行を機にゲームチェンジすべく虎視眈々と狙っている。また先般、独フォルクスワーゲングループが、EV電池専門会社Power Coを設立。欧州6カ所のほか、北米に2カ所の電池工場建設を表明したばかりだ。(編集担当:吉田恒)