電子書籍の「黒船」が来襲、迎撃態勢は整っているのか

2012年11月26日 11:00

 1600億円市場ともいわれる米国の電子書籍市場で「ひとり勝ち」のキンドル(アマゾン・ドット・コム)の日本市場向け専用端末が発売された。同社のサイトのほかに、大手家電量販店や大手書店でも取り扱う。

 新発売の「黒船」キンドル・ペーパーホワイトの価格は、無線LAN対応型で7980円。発表当初の予価から5000円ほど安い設定だ。主要な電子書籍4社の専用端末では今年7月に楽天が発売したコボタッチの6980円のつぐ低価格となっている。現時点で日本国内シェアの50%以上を占めるソニーのリーダーシリーズも最も安いモデルで9980円、この12月に発売になる凸版印刷のリディオ(8480円)と、価格では1万円を下回るレベルでの攻防となっている。

 これまで電子書籍端末の価格は、日本での電子書籍の普及を妨げてきた理由のひとつだった。その点では各社の端末の低価格化は、新たな需要を産む要因になるかもしれない。が、その一方で、電子書籍を選ぶ場合、専用端末で利用できるコンテンツの数も大切な要素になる。「業界トップ」のソニーは専門ストアのリーダーストアで取り扱っているコンテンツが2012年9月時点で6万3000点以上で、それ以外に対応しているコンテンツを含めれば12万冊になる。楽天のコボ・タッチに対応する専門ストア・は約6万5000点。凸版印刷から発売予定のリディオは9万5000点からスタートする予定で、「黒船」キンドルも同じ同程度の点数を用意して日本市場に船出をした。

 日本の電子書籍市場はいまだ700億円に満たないが、直近で1000億円、潜在的にはアメリカを大きく上まわる3000億円以上の規模だといわれている。今のところ先行したソニー、追随した楽天がシェアを分け合っているものの、凸版印刷、そして何より世界的にイニシアチブをとるキンドルの参入で勢力図はまた大きく変化するのはまちがいない。電子書籍は価格もさることながら、コンテンツの豊富さ、新刊への対応力などが大きな鍵。ほとんど鎖国状態だった日本の電子書籍市場に来襲した「黒船」のおかげで、一気に市場が活性化するかもしれない。